この記事の初出は2024年9月11日
昨日の配信記事で述べたように、イーロン・マスクは民主党支持から共和党支持に転向し、トランプが当選した場合は政権入りする意向という。いったいなぜ彼は、共和党支持、トランプ支持に転向をしたのだろうか?
その背景にあるのが、「青い州」((Blue States:ブルーステート)から「赤い州」(Red States:レッドステート)への企業と人々の脱出(移転、移住)である。とくに、赤い州テキサスへの脱出は大きなトレンドとなっている。
このトレンドにより、アメリカの産業の中心は北部から南部に移ろうとしている。今回の大統領選挙にも、このトレンドは大きく影響する。
“アンチ・ウォーク”だけが転向理由か?
イーロン・マスクは今年初め、バイデンを支持しないと表明し、明確に民主党から共和党支持に転向した。さらにトランプ支持を打ち出してトランプと会談。先日は、トランプが「当選したら要職に就いてもらう」と要請したことに対し、「楽しみにしている。報酬、肩書、表彰はいらない」とXに投稿した。
このマスクの行動は、本人の表明によると、カリフォルニアがあまりにリベラル化し、反「「LGBTQ+」法案を成立させたことにある。元々“アンチ・ウォーク”(Anti-Woke)だったマスクは、「我慢の限界に達した」(Xへの投稿)と言うのだ。
しかし、転向の理由はそれだけだろうか?
マスクのような先見の明を持つ稀代のビジネスマンが、単なる政治信条だけで、自分の行動を180度変えてしまうものなのだろうか?
「青い州」から「赤い州」への脱出がトレンド
マスクは、トランプ支持表明と時を同じくして、宇宙開発企業「スペースX」と「X」(旧ツイッター)の本社をカリフォルニア州からテキサス州に移転させることも表明した。
すでにマスクは、2020年に、テスラの本社機能をシリコンバレーのパロアルトからテキサス州オースティンに移転させ、ギガファクトリーを建設した。また、居住地もカリフォルニアからテキサスに移している。
それまで彼は、ロサンゼルスのベルエアにある豪邸を含め、カリフォルニアに少なくとも7軒の家を所有していた。それをすべて売り払って、テキサスに移住したのだ。
となると、共和党支持への転向は、一種の計算に基づくものとも言える。
それは、カリフォルニアのような「青い州」(Blue States:ブルーステート)より、テキサスのような「赤い州」(Red States:レッドステート)のほうが、ビジネスにとって圧倒的にフレンドリーで、暮らしやすいからだ。
ここ何年もの間、アメリカでは、青い州から赤い州への脱出が大きなトレンドになっている。企業も人々もレッドステートを目指すようになっている。
オラクル、ヒューレット・パッカードも移転
ハイテック企業、いや全業種において、本社(ヘッドクオーター)を置く最適の州とされるのがテキサスである。テキサスは、共和党が支配するレッドステートだが、ことビジネスにおいてはブルーステートよりはるかに利点が多い。
カリフォルニアからテキサスに移転した代表的な企業と言えば、オラクルとヒューレット・パッカードがある。オラクルは2020年に、シリコンバレーのレッドウッドシティからオースティンに移転。ヒューレット・パッカードは同じくシリコンバレーのパロアルトからヒューストン近郊のスプリングに移転している。
このほか、テキサスに移転した大企業には、エンジニアリングのエイコム(AECOM)や不動産のCBRE、金融のチャールズ・シュワブなどがあるが、中小を入れたら700社以上に上る。本社移転とは限らず、拠点を置いている企業には、シスコシステムズ、アドバンスト、アマゾン、アップル、アーム(ARM)、イーベイ、グーグルなどがあり、すべて名だたる先進大企業である。

この続きは10月11日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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