2025年7月10日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

山田順の「週刊:未来地図」 ウクライナ戦争、印パ戦争の衝撃「自律型AI」が使えないと未来はない! (下)

ウクライナがSNSに投稿したロシア空軍基地ドローン攻撃の動画

インド空軍のキル・チェーンは機能せず

戦闘機同士の空中戦と言っても、それは空対空ミサイルの撃ち合いであり、それを遠隔操作するシステムが必要となる。探知・射撃・誘導・撃破という流れを行う一連のシステムを「キル・チェーン」と呼んでいるが、これの優劣が勝敗の決め手となるという。
具体的には、SPECTRAのようなシステムは、ミサイルを誘導するレーダーに妨害電波を送り、自動的に熱追跡ミサイルをかく乱させるために数々の網を張り巡らせる。しかし、今回、中国のJ-10CE 戦闘機から発射されたPL-15 BVR空対空ミサイルは、これらのすべてをかいくぐり、ラファールのパイロットに回避する時間をまったく与えなかったという。
インド空軍のキル・チェーンは、パキスタン側の電子戦によって無効化されたのである。インドの兵器体系は、ロシア製を中心にして各国の物をつなぎ合わせているため、このようなことになったとも言われている。
ただし、はっきりしたのは、兵器単体の性能よりも、優れたキル・チェーンの運用が重要だということだった。

自主性を持って自ら判断して行動するAI

世界に衝撃を与えた、この2つの戦闘が象徴するのは、いまや戦争はネットワークの戦いであるということ。ドローンやステルス機などの高性能ハイテク兵器をデータリンクで結ぶことが、もっとも重要であるということだ。
そして、それを動かすのは、もはや人間ではない。AIである。
AIは日進月歩し、いまでは「Agentic AI」(自律型AI)が登場し、人間の介入なしに目標達成のために自発的に行動し、複雑なタスクを実行できるようになった。しかも、自分で学習して進化を遂げていく。
従来のAIシステムは、指示待ちで受動的だった。しかし、自律型AIシステムは、人間のように自主性を持って自ら判断して行動する。
こう教えられても、実際にそれを目の当たりにしたことがない、私のような人間にはピンと来ないし、想像がつかない。ただ、ChatGPTのような生成AIを上回るAiであることは理解できる。

戦争で活用されている主な自律型AI

自律型AIは、すでに戦争に使われ、改良に改良を重ねられている。以下が、戦争で活用される主な自律型AI(AIエージェントとも呼ぶ)の例である。
[自律型兵器システムLAWS:Lethal Autonomous Weapon Systems]
特定の軍事目標が与えられた際に、自ら脅威を識別・分類し、最適な攻撃経路や方法を計画・実行する。そして、その結果を評価して、次の軍事行動に活かす。つまり、人間の判断・指令を必要としない。

[自律型偵察・監視ドローン/ロボット]
広範囲のエリアを偵察・監視する自律型システム。自ら飛行経路を計画したり、変更したりして、異常を検知・分析し、必要に応じて人間への報告を行う。また、情報を分析して作戦行動のアドバイスを行う。
とりあえず現在では、地上ロボットと空中ドローンの機能を組み合わせて、屋内ミッションをサポートするようなことが行われている。

[サイバー防衛AIエージェント]
ネットワークの脆弱性を特定し、攻撃を予測・阻止するための計画を自律的に立案して実行する。その際、新たな脅威があればそれを学習し、防御能力を向上させる。
そのため、人間がまったく介入することなしに、継続的に防衛能力が強化される。

調べたところ、まだまだ例はあるが、問題なのは、自律型AIはいまや軍事に止まらず、多くの企業、組織が導入していることだ。とくに、近年はサイバー攻撃が多発しているので、AIエージェント導入によるセキュリティの強化が図られている

この続きは7月11日(金)発行の本紙(メルマガ・ウェブサイト)に掲載します。 
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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