2025年9月30日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

山田順の「週刊:未来地図」 「ありえない」から「ありえる」に!このままでは中国はアメリカを追い抜く!(上)

 私はこれまで、中国がアメリカに代わって世界覇権を握ることなどありえないと思ってきた。しかし、トランプというとんでもない“独裁”大統領の出現で、それは「ありえない」から「ありえる」に変わった。
 かつて「米中逆転」が盛んに言われた。しかし、それを聞くたびに、私はそれを一笑に付してきた。だが、もうそんなことは言っていられない。トランプは確実にアメリカのハードパワー&ソフトパワーを破壊している。
 そんななかで、地球温暖化が進み、AIが人間にとって代わろうとしている状況を見ていると、アメリカより中国のほうが優位に思えてならない。
 最近のアメリカでは、かつて「米中逆転」を否定していた識者、専門家たちが、次々と自説を曲げている。

■ディズニーというアメリカ文化のなかで育った

 先日、久しぶりに東京ディズニーランドに行った。娘一家とともに、3歳になった孫娘に初めてディズニー世界を体験させるためだ。本、テレビ、アニメでディズニーキャラクターに親しんできた孫娘は、ディズニーのプリンセスたち、シンデレラやベル、スノーホワイト、エルザなどがこの世界に本当にいるものと思っている。
 だから、ディズニーランドは、孫娘にとっては現実そのものだ。まだ3歳の娘にとって、物語の世界も現実の世界も一緒である。
 気温35℃を超える猛暑日のせいか、夏休みというのに、それほど混んでいなかった。そのため、新アトラクションの「美女と野獣」(Beauty and the Beast)を予約してすぐに見ることができた。孫娘は、最近、「Beauty and the Beast」の主題歌「Tale As Old As Time」をそらんじて歌えるようになった。
 孫娘の歌う姿を見ながら、娘の小学校のときのことを鮮やかに思い出した。「美女と野獣」が封切られた年の学芸会の舞台で、ベル役になった娘は、この歌を舞台で歌った。当時の娘の姿と孫娘の姿が重なる。
 そして、つくづく思った。私たち親子は、ディズニーという、一つの典型的なアメリカ文化のなかで育ったのだと—-。
 *ちなみに、東京ディズニーランド は1983年にオープンした。「美女と野獣」は1991年封切り。

■トランプはアメリカのソフトパワーまで破壊

 アメリカは、ハードパワー(hard power)とソフトパワー(soft power)の両方を兼ね備えた世界覇権国家である。
軍事力や経済力を用いた強制力のあるハードパワーだけでは、世界は支配できない。文化(映画、音楽、芸術)、価値観(自由、民主主義、市場経済)などのソフトパワーも極めて重要だ。
 これは、国際政治学者ジョセフ・ナイの理論だが、第2次大戦後の世界は確かにこの通りだった。冷戦はあったが、それが終結後は、アメリカのハードとソフト両面による1極世界になった。
 しかし、“独裁”大統領トランプは、この両方とも壊そうとしている。
 報道においては経済、外交が中心で、これまでの世界秩序、自由貿易体制を破壊し、西側の同盟を破壊しかねないトランプ関税、力によるエセ平和外交ばかりが注目されるが、トランプによるソフトパワー 、すなわちアメリカの価値観、文化の破壊も凄まじい。
 その最たるものが、最高学府のハーバードの弾圧だろう。

■ディズニーの「DEI」行き過ぎに調査命令

 ディズニーランドの話から始めたので、ディズニーに話を戻すと、トランプはディズニーも弾圧している。前々から彼は、ディズニーがあまりにも「DEI」(多様性、公平性、包括性)なので、それを非難してきた。
 そのため、今年の3月に、米連邦通信委員会(FCC)にディズニーと傘下のメディアABCを調査するように命じた。FCCのブレンダン・カー委員長は、「ディズニーとABCはがFCCの規制に反して、悪質なDEI差別を推進している」との声明を出した。
 要するに、性的マイノリティ(LGBT)や人種・民族的マイノリティ(黒人やラティーノ)を優遇しすぎだというのだ。
 ディズニーに対する弾圧的な命令は、映画『白雪姫』の実写版が公開されてすぐに出された。この映画はおおコケし、その原因は主演女優がラティーノのレイチェル・ゼグラーだということ、また、白雪姫を救うのが王子ではないからとされたが、トランプの命令はそれに追い打ちをかけたと言える。

この続きは10月2日(木)に掲載します。 
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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