2026年1月9日 NEWS DAILY CONTENTS

「ありがとう、メトロカード」ニューヨーカーに愛された黄色いカードの行方…お葬式に150万円のプレミア価格、そしてミュージアムへ

12月31日に販売が終了したニューヨークのメトロカード

1993年からニューヨークの地下鉄利用の「切符」として導入されたメトロカード。2025年12月31日、時代の移り変わりとともに正式に販売終了となり、地下鉄移動が主な交通手段であるニューヨーカーの象徴が、また一つデジタルへと移行した。

12月31日に販売が終了したニューヨークのメトロカード

他の都市に住んでいる人にとっては「便利なタッチ決済になるだけでは?」と簡単に捉えられるかもしれない。しかし街の住人にとって、メトロカードは “共通言語” のような存在だった。スピードが速く、さまざまな人種が入り混じるこの街で、あの黄色いカードだけは、誰もが同じように手にしていた。販売終了となった今、メトロカードはどうなっているのか。

メトロカードの限定グッズ、ニューヨーク・トランジット・ミュージアム(New York Transit Museum)にて

街の公園ではメトロカード「お別れの儀」

12月30日、販売終了の前日。マンハッタンにあるワシントン・スクエア・パークでは、メトロカードの「お葬式」が行われていた。事前にインスタグラムを通じて呼びかけが行われ、当日はメトロカード引退を祝したケーキを持って街を歩く人や、ファッションアイテムとして身体の一部に身につける人など、数多くの人々が集結。1993年から2025年までの功績が讃えられた。

その後、同イベントの動画はSNSで拡散され、多いものでは390万回再生。5000件を超えるコメントの中には「正気でやっているのか?」と揶揄する声もあったが、大半は「寂しくなるよ…」「子どもに見せるためのカードは何枚か保管してある」「ニューヨークが本当に大好きだ」「僕はメトロカードを額縁に飾ったよ」など、別れを惜しむ声だった。

「お葬式」の様子(インスタグラムよりスクリーンショット)

さっそくプレミアム価格? 150万円で出品

数字にしてみれば、たった30年あまり。しかしメトロカードは、ニューヨークを形容する存在の一つとして確実に街に根付いていた。それまで使用されていた金属製コイン投入システムから大きな進化を遂げ、1997年には地下鉄とバスの無料乗り換え制度も導入された。

不具合があった際の返金方法は「郵送で申請」と、かなりアナログだったメトロカード

また、表面デザインを使ったコラボ企画では、ポール・マッカートニーやデヴィッド・ボウイといったアーティストのカードが登場。さらに1994年には、初のアスリートコラボとして地元の有名ホッケーチーム、ニューヨーク・レンジャーズが表面を飾った。メトロカードは単なる磁気カードではなく、カルチャーの象徴としても親しまれてきた。

表面だけでなく裏面を使ったプロジェクトも定期的に行われていた。写真は2002年〜2012年に行われた地下鉄の安全を促すキャンペーン

現在、そんな過去の “お宝カード” はオークションサイトeBayで多数出品されている。気になる人はチェックしてほしいが、驚くべきは、一般的なあの黄色いカードまで並んでいることだ。価格は数百ドルから、なかには9500ドル(約150万円)というものまである。説明欄には「Year 2014」「Year 2026」など年号が書かれたものもあり、販売終了からわずか10日あまりで、メトロカードを“プレミアム化”しようとする動きがすでに見受けられる(笑)。

オークションサイトで高額販売されているメトロカード(ebayからスクリーンショット)

ミュージアムの最新展示もアツい

そんな限定カードをeBayで課金せずとも見てみたい、という人に朗報だ。ブルックリンにある「ニューヨーク・トランジット・ミュージアム」では、「FAREwell, MetroCard(さよならメトロカード)」と題した展示が開催されている。前述のアーカイブコレクションはもちろん、これまでの歴史をパネル展示や映像で振り返ることができる。

かつて営業していた地下鉄駅の構造をそのまま展示空間として使っているニューヨーク・トランジット・ミュージアム(New York Transit Museum)
2025年12月17日から行われている「FAREwell, MetroCard」の展示内容

さらに、メトロカードの公式キャラクターCardvaark(カードヴァーク:Card〈カード〉とAardvark〈ツチブタ〉を掛け合わせた名前)も登場。等身大パネルと一緒に写真撮影をすることも可能だ。

メトロカードの公式キャラクターCardvaarkをご存知?

展示のゴールにあるミュージアムショップには、メトロカード限定グッズがずらり。筆者が訪れた日も、「メトロカードのグッズやばい」「何か記念に買っとく?」と、訪問者たちがセーターやマグカップ、文房具などを嬉しそうに手に取っていた。街の土産店などでも関連グッズは数多く販売されているが、これらがいつ販売・生産終了になるのかは分かっていない。

「メトロカード」コーデも叶う、ニューヨーク・トランジット・ミュージアム(New York Transit Museum)にて

残高が残っているメトロカードは、現在も地下鉄での利用が可能で、現時点では「2026年後半まで」と発表されている。デジタル化が進み、アナログなものが次々と姿を消していく時代。フィルムカメラやフォトブースなどアナログ再起のムーブメントがありつつも、交通機関のような大規模インフラの進化は止められない。

それでも今回のメトロカード販売終了を、ここまで多くの人が関心を寄せ、形にして送り出したことで、また一つの「アナログ文化」が歴史に刻まれた。時代の流れをやり過ごすか、楽しむかは自分たち次第。さすがはカルチャーとエンタメの街、ニューヨーク。こうした文化の蓄積こそが、この街をより面白く、「古き良き」魅力を感じさせてくれるのだろう。

ありがとう、メトロカード。

取材・文・写真/ナガタミユ

New York Transit Museum

住所
99 Schermerhorn St, Brooklyn, NY 11201
公式サイト
https://www.nytransitmuseum.org/

                       
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