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ロサンゼルスのドジャースタジアムで日本酒が販売されているのをご存知だろうか? 日本酒「八海山」の老舗酒蔵、Hakkaisan八海醸造グループとのパートナーシップが始まって約1年、大谷翔平選手ら日本人選手の活躍も追い風となり、アメリカだけでなく日本国内でも反響が広がっている。ドジャースタジアムでビールと並んで日本酒が提供される、かつては想像もしなかった光景が現実となった今、この取り組みについて八海醸造株式会社の社長、南雲真仁さんに話を聞いた。

スポーツ × 日本酒の意外な組み合わせ
Hakkaisanがドジャースとパートナーシップ契約を結んだのは2025年3月。ドジャース側からの声がけにより実現したコラボレーションで、「初めは嘘かと思っていました」と当時を振り返る。

「お客さまからの反響はとてもいいですね。スタジアムで飲むお酒というとビールを思い浮かべる人がほとんどだと思いますが、野球は展開がゆっくりな分、じっくりと飲むことができる日本酒が意外と合うんです」と南雲さん。
価格は1杯19.99ドル(純米大吟醸)で、ビール1杯と同じ価格帯で販売されている。アルコール度数や、ビールを飲んだ後の “お手洗い問題” を考えると、日本酒はスタジアムで飲むお酒として新たな選択肢の一つともいえる。

スタジアム内では、Hakkaisanのロゴと「ドジャース」とカタカナで印字された専用グラスで提供され、一部の席ではボトルの持ち込みも可能となっている。またスタジアム外では、現地チームが考案した日本酒カクテルや、夏場に向けた飲みやすいメニューも販売されているという。
一方で南雲さんは「実際にはカクテルよりも、そのまま飲む人の方が多いんです」と話す。「それもまた日本酒が受け入れられている一つの指標なので、光栄ですね」

さらに今年は、昨年反響のあった缶製品にも力を入れていく予定だ。スタジアムの席で手軽に飲めるオリジナル缶は、見た目のデザイン性も好評なことから、生産数を増やしていくという。ドジャースでは大谷翔平選手をはじめ日本人選手の活躍が続き、日本各地から観戦に訪れるファンも多い中、「お土産」や「ジャケ買い」需要にも応えている。

「ドジャースを嫌いな人はいない」
アメリカでの展開に加え、日本国内でも影響は「想像以上」だったという。八海山を代表する「特別本醸造」は、通常の茶色いボトルに加え、ドジャースのチームカラーであるブルーの記念ボトルを発売。さらに昨年のナ・リーグ優勝、ワールドシリーズ優勝のタイミングでも記念ボトルを発売し、いずれも関心を集めた。

「普段、日本酒をあまり飲まない層にも、記念ボトルをきっかけに手に取ってもらう機会を作れました。興味深かったのは、ブルーボトルが売れることでオリジナル商品の販売が落ちるのではという懸念もあったのですが、実際にはオリジナル商品も例年並みを維持し、それに加えて記念ボトルの売上が上乗せされる形になりました」

ドジャースをきっかけに八海山、そして日本酒そのものに興味を持つ層が確実に広がっていることがうかがえる。「日本でドジャースを嫌いな人って、僕は聞いたことがないので、八海山にとっても関心を持ってもらえる良いきっかけになっています」
西はドジャース、東は?
Hakkaisanは日本での酒造りと並行して、「SAKEを世界飲料に」をスローガンに掲げ、海外でのSAKE文化の発信にも力を入れてきた。アメリカの西海岸ではドジャース、そして東海岸ではブルックリンにあるニューヨーク初の酒蔵として知られる「ブルックリン・クラ(Brooklyn Kura)」と協業している。

製品開発や日本での販売を支援する他、併設する「サケ・スタディーズ・センター(Sake Studies Center)」では、八海醸造で酒造りを学んだティモシー・サリバン(Timothy Sullivan)さんがニューヨーカーにSAKE文化を広めている。

「実はドジャースとブルックリンにもつながりがあって、もともとドジャースはブルックリン生まれのチームだったんです。なので古参のファンには『ブルックリン』と書かれたTシャツを着てロサンゼルスで応援している人もいて、面白いですね」
南雲さんは、西と東それぞれの取り組みを通じて海外での日本酒の認知をさらに高めていきたいと語る一方で、「年々、国内の日本酒業界は縮小しています。そうした中でも、日本酒の価値をしっかり伝えながら、楽しんでいただける環境を作っていければ」と話す。

「Hakkaisanは清酒メーカーでありながら、ビール、焼酎、梅酒、甘酒、ジン、ウイスキーなども手がけています。そうした広がりも含めて、ブランドとしてのイメージをより立体的に作っていきたいですね」
◇
野球、そして日本人選手の活躍とともに、日本酒文化とブランドイメージを発信していくHakkaisan。世界が注目するドジャースタジアムで、ビールと並んで日本酒が販売される光景は、南雲さんが入社した8年前には想像もできなかったものだという。
10年、20年先、日本酒がどのような広がりを見せるのか。その可能性は、すでにスタジアムの中で少しずつ形になり始めている。
取材・文/ナガタミユ
写真/Hakkaisan
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