映画「プラダを着た悪魔2」のプロモーションで来日したアン・ハサウェイが、日本で行きたい場所として挙げたのは、東京でも京都でもなく「鳥取」だった。

そんな“意外な旅先”として海外で存在感を高めつつある鳥取県が9月2日、ニューヨークのジャパン・ソサエティーで観光セミナーおよび交流レセプションを開催。旅行会社やトラベルアドバイザー、現地メディア関係者らが集まり、知られざる鳥取県の魅力に触れた。

9月2日にジャパン・ソサエティーで開催された鳥取県の観光イベント

アン・ハサウェイも注目

「発音は少し違っていましたが、確かに『鳥取』と言ってくれました」会場を笑わせたのは、訪米に合わせて登壇した鳥取県知事の平井伸治さん。アン・ハサウェイは鳥取の海やビーチ、砂丘について「マジカル」と表現したといい、平井知事はさっそく招待状を送ったという。

「まだ返事はありません」と笑いを誘いながらも、その表情からは鳥取を世界へ売り込む本気度が伝わってくる。

来場者と杯を交わす平井知事

実は平井知事自身も、ニューヨークと深い縁を持つ。約20年前、自治体国際化協会ニューヨーク事務所長として5番街で勤務。そのニューヨークから鳥取県知事選への立候補を決意し、2007年に初当選した異色の経歴の持ち主だ。

現在は5期目。今回のイベントでも、時折ジョークを交えた流暢な英語で鳥取県の魅力をアピールし、会場を盛り上げた。

実はすごい、鳥取県

鳥取県には10の温泉地が点在し、 「名探偵コナン」や「ゲゲゲの鬼太郎」ゆかりの地としても知られる。日本酒の産地でもあり、今年1月には世界的人気を集めるスニーカーブランド、オニツカタイガー(Onitsuka Tiger)が、境港市にブランド初の専用生産拠点を開設した。

オニツカタイガー初の専用生産拠点「オニツカ・イノベーティブ・ファクトリー」(photo: 公式リリース)

いま海外では、東京や京都といった定番の観光都市ではなく、まだ知られていない“Hidden gem”を求める旅行がブームに。温泉、ポップカルチャー、食、ものづくりまでそろう鳥取県が、知られざる日本に出会える旅先として注目を集めている。

イベントで振る舞われた日本酒

「もっと世界で愛される魅力が…」

イベント終了後、デイリーサンニューヨークのインタビューに応じた平井知事。鳥取県がこれまで進めてきた海外誘客について、次のように振り返る。

「われわれは伝統的には環日本海での交流を進めてきました。なかなか航空ではうまく発展しなかった中で、航空路線を開拓して、今ではソウルや台湾への路線ができたり、クルーズ客船を誘致したり。アジアから来る人たちの開拓もできました」

その流れを、今後はアメリカをはじめとする世界へ広げていきたい考えだ。

「アジアだけではなく、もっと世界で愛される魅力があると思っています。でも温泉や食だけでは、他の地域との差別化が難しい部分もあるので、鳥取県ではアニメなども前面に出しながら発信してきました。それが少しずつ成果につながってきています」

かつてニューヨークに住んでいたこともある平井知事。来場者を盛り上げる

海外旅行者の関心が東京、大阪、京都といった定番都市から地方へ広がり、“みんなが知らない本当の日本”や“自分だけの体験”を求める傾向にある。「特に欧米系の方は時間をかけて来られるので、そういう意味では、いろんなチャンスがあると思います。旅行先の選択肢が、どんどん鳥取県まで広がってきています」

その変化は、既に現地旅行会社が扱う商品にも表れ始めているという。「実際、こちらの旅行会社でも、地方を巡る旅行商品が企画され始めています。大都市だけでなく、鹿児島や鳥取などを巡るプランも出ています。西日本を巡る旅行商品の中に鳥取県も含まれており、そこには十分な市場性があると考えています。」

現地に住む来場者たちは、鳥取県のグルメにも夢中だった

今回のイベントに旅行会社やトラベルアドバイザーらを招いたのも、鳥取を実際の旅行先として提案してもらうためだ。

「今日はトラベルアドバイザーなどを中心に来ていただき、今後も海外のメディアを招いたFAMトリップなども企画しています。今はSNSや翻訳も発達しているので、こうして日本のメディアで発信していただけることにも、大きな価値があると思っています」

“Hidden gem”を求める旅行者が増える中、まだ広く知られていないことは、鳥取県にとって大きな強みに変わりつつある。

取材・文・写真/ナガタミユ