全身白でドレスアップし、食事だけでなくテーブルや椅子まで自分で持参。そんなユニークな野外ディナーパーティー「ディネ・アン・ブラン(Dîner en Blanc)」が、10月上旬にニューヨークの「ピア84」で開催された。会場は直前まで秘密、準備もなかなかの大仕事。それでも長年通い続ける人が多いこのイベントを今年も訪ねると、華やかな景色とともに「また来たくなる理由」が見えてきた。

2026年の「ディネ・アン・ブラン(Dîner en Blanc)」より(photo: Cristian Paez)

白い服は、出会うための目印

始まりは1988年のパリ。海外生活から戻ったフランソワ・パスキエが、友人たちとの再会を楽しもうと、ブローニュの森で食事会を開いたことがきっかけだった。

公共の場所でもお互いを見つけられるよう、服装は白に。それぞれが友人を連れて参加し、翌年にはさらにその輪が広がっていったという。今ではイベントの象徴となっている白いドレスコードも、もともとは人と人が出会うための目印だったのだ。

ドレスコードは全身白(photo: Cristian Paez)

ニューヨークで初めて開催されたのは2011年。現在のブルックフィールド・プレイスにあたるワールド・フィナンシャル・センターの広場に、約1200人が集まった。パリの友人同士の食事会は、ニューヨークでも毎年約4000人が集う、「大人のピクニック」へと広がった。

秘密の会場へ、食卓ごと移動

2026年の舞台は、ハドソン川沿いのピア84。テーマは、パリで芸術や食文化が華やかに花開いた時代をイメージした「Une Soirée Parisienne – La Belle Époque」だった。今年は著名シェフのトッド・イングリッシュが3種類の特別メニューを手がけ、ディナーを彩った。

港にずらりと並ぶ来場者のピクニックテーブル(photo: Eric Vitale)

このイベントは、会場へ向かうところからひと味違う。開催場所は直前まで秘密。参加者はテーブルや椅子、食器、料理などを用意して指定の集合場所に集まり、ボランティアのリーダーに案内されて目的地へ向かう。

到着したら、まずは食卓づくり。テーブルを広げ、白いクロスをかけ、食器や料理を並べる。服装だけでなくテーブルセッティングも白で統一し、それぞれのディナースペースを完成させるのがルールだ。

それぞれのピクニックブースは来場者の手作り(photo: Eric Vitale)

レストランなら席に着けば始まるディナーも、ここでは準備から自分たちで。何を着て、何を食べ、どんな食卓にするか。その工夫が集まって、水辺に一夜限りの巨大なダイニングが出来上がる。

「このイベントで出会った」

準備が整うと、参加者が白い布ナプキンを一斉に頭上で振る「ナプキン・ウェーブ」でディナーがスタート。ハンカチを振り回しているようにも見えるこの恒例の儀式が、それぞれの食卓を一つのパーティーにする。

このイベントに参加することが「出会い」にも繋がっているという(photo: Cristian Paez)

会場では大人世代の姿が目立ち、長年通っている人も多い。2015年から参加しているという2人組は、なんと「このイベントで出会った」のだそう。2022年から通う別の来場者も、参加する理由を「新しい人に出会えるから」と教えてくれた。

友達と最高の時間を過ごすために来る人もいれば、新しい出会いを楽しみにしている人もいる。参加者に魅力を聞くと、華やかな景色や食事とともに、何度も「人」の話が出てくるのが面白かった。

ドレスも料理も、本気の女子会

女子会として参加していたグループには、10年前から通う人も、今年初めての人も。イベントのベストパートは「ドレスアップして、それぞれの才能を持ち寄ること」だという。

会場を彩る踊り子の姿も(photo: Eric Vitale)

ファッションも料理も、テーブルの飾り付けも、白というルールの中で個性を発揮できる。「才能を持ち寄る」とは、このパーティーにぴったりの表現だ。準備することが多い分、友達と一緒につくり上げる楽しみもあるのだろう。

後半になると、食事を楽しんでいた大人たちが音楽に合わせて踊り始め、会場はダンスパーティーへ。今年も素敵だったのは、スマホを手にする人があまり目に入らなかったことだ。持参した料理を囲み、会話を楽しみ、今度は踊る。みんなが目の前の時間に夢中になっている姿に、こちらまで楽しくなってくる。

「みんなファミリーのよう」

今回で10回目の参加となる来場者は、楽しみにしていることをこう話してくれた。「この景色、ライトの中でディナーができること。それに、ここに参加している人はみんなファミリーのようなもの」

参加者の年齢層は30〜40代以降が多い印象(photo: Eric Vitale)

宴の最後はテーブルや椅子、食器、ゴミまで持ち帰り、会場を元の状態に戻すのがルール。一夜限りの白い食卓は、参加者自身の手で片付けられる。

パーティの締めはDJを囲んだダンスパーティー(photo: Jane Kratochvil)

それでも、ここで出会った人とは次の年も一緒に来られるし、新しい友達を誘うこともできる。友人が友人を誘う食事会から始まったイベントが、今も人の輪を広げている。「みんなファミリーのようなもの」という言葉に、手間をかけてでもここに戻ってきたくなる理由を教えてもらった気がした。

取材・文/ナガタミユ