連載503 山田順の「週刊:未来地図」トランプ2024年出馬に意欲。 アメリカの政治腐敗と分断はますます深刻化する!(下2)
コーク兄弟の兄が間違いを反省し告白
コーク兄弟が共和党を支援したのは、共和党が「小さな政府」を標榜するリバタリアン的な政党だったからだ。つまり、企業経営者にとって税負担が少なくてすむ。また、企業活動も自由だ。
しかし、それが結局は、経済格差を拡大させ、白人の貧困層を拡大させ、トランプを誕生させてしまった。その一方で、民主党の左傾化が進んだ。こうして、アメリカは分断されてしまったのだ。
コーク兄弟の責任は大きいと思っていたら、昨年、弟のデイビット・コークが死に、兄のチャールズ・コークが回顧録を出版した。この本の内容を知って、私は驚いた。
それは、チャールズが自分がしてきたことを深く反省しているからだ。彼は、予想できない結果を招いてしまったとして、暗にトランプを批判していた。コーク兄弟とトランプの不仲は、トランプが大統領就任後に報道されたことがあったが、事実だった。
今年の1月5日、チャールズは、自身が設立した保守政治団体「AFP」(Americans for Prosperity :繁栄のための米国民)を通して、「バイデン次期大統領の選出過程を支持する」との声明を出した。
トランプに資金提供をしてきた後ろ盾
日本のメディアはほとんど伝えないが、トランプに資金を提供してきた本当の後ろ盾は、ヘッジファンドの雄「ルネッサンス・テクノロジーズ」(Renaissance Technologies LLC)であり、そこのCEOのロバート・マーサーとその娘のレベッカだ。
トランプ政権はこの父娘がつくったと言っても過言ではない。このことはすでに、このコラムで2回にわたり詳しく書いた(2017年3月)。 トランプが大統領補佐官にオルト右翼のスティーブン・バノンを、上級顧問にケリーアン・コーンウェイを起用したのは、2人がマーサー父娘のお気に入りだからだ。
マーサー父娘は、トランプのスーパーパック「Make America Great Again PAC」に大口献金をし、ピーター・シュワイザーの書いた『クリントン・キャッシュ』を基にした映画『クリントン・キャッシュ』の制作に資金を提供した。この映画で、ヒラリーはカネに汚いダーティな女だというイメージが定着し、選挙に敗れたと言える。
トランプが2024年大統領選への出馬を示唆したCPACも、マーサー父娘が資金を提供している。CPACは、「ACU」(American Conservative Union)を主催団体としていて、その年次総会に当たる。
毎年解されるCPACには、「NRA「(全米ライフル協会)、「ティーパーティー」、「ペイトリオッツ」などに加え、シンクタンクの「ヘリテージ財団」や「AEI」、多くの保守系メディア、リバタリアン団体などが参加している。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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