連載1047 「プリゴジンの乱」の行方は?
日本の報道ではわからないロシアの現実 (中2)
(この記事の初出は2023年6月27日)
ロシアのGDPの40%はマフィアが稼ぐ
ソ連時代、ロシアンマフィアは「掟の中の首領(ドン)」と呼ばれ、モスクワには512の組織があったという。Wikipediaで、「ロシアンマフィア」の項目を見ると、現在、ロシアンマフィアの組織の数は5600以上にも及び、構成員の数は10万人以上だとしている。
また、ロシアのGDPの40%を、マフィアたちの犯罪組織が稼いでいるという。
さらに、彼らの“しのぎ”については、次のような記述がある。
《手を広げたロシアンマフィアの主な活動は、小規模な組織なら恐喝、売春などを主に行う。逆に大規模な組織なら国営企業や民間企業の乗っ取り、薬物売買、マネーロンダリング、武器の密輸などを行う》
このようなロシアンマフィアの総数はおよそ16万人とされ、「イタリア系の7万を超える最大勢力となっている」という。
ロシアンマフィアのネットワークは世界中に張り巡らされ、たとえば、アメリカでは、NYのブルックリンのブライトンビーチのロシア人街に最大の拠点がある。
かつてNYに行ったとき、「ブライトンビーチには行くな」と知人に言われたことを思い出す。
もちろん、日本にも拠点がある。ロシアンマフィアは、主に北海道で日本の暴力団組織と深く繋がっている。カニの密漁、中古車の横流し、覚醒剤、合成麻薬販売などを手がけている。
ウクライナはロシアンマフィアの巣窟
ロシアがマフィア国家なら、ウクライナも同じマフィア国家である。ウクライナ戦争ですっかり忘れられたが、ウクライナは「ならず者国家」「汚職大国」として悪名高かった。以前の欧米メディアには、ウクライナを犯罪集団が暗躍する「マフィアの楽園」とする記事が散見された。
ソ連崩壊後、ウクライナは「ならず者国家」として、ソ連が残した武器を世界の犯罪組織に売りさばいた。もし、核兵器を残していたら、彼らはそれをほかの「ならず者国家」に売っただろう。
ウクライナは、中国には空母「遼寧」となったソ連製の空母「ヴァリャーグ」を売り飛ばした。
ウクライナのマフィアの一大拠点は、南部の港湾都市オデーサである。ここは、昔から密貿易の中心地で、アフガニスタンからトルコ、そして欧州にいたる広大な犯罪ネットワークの中継基地である。
オデーサには「密輸博物館」があり、ここには18世紀のロシア帝国時代から現代まで、流れ込んできた真珠や麻薬、銃などあらゆる密輸品が展示されている。
しかし、ウクライナ戦争により、ロシアンマフィアとウクライナマフィアのネットワークは分断されてしまった。
(つづく)
この続きは7月21日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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