41丁目の5番街とマジソン街の間にその店はある。入り口は小さく、看板も目立たないから通り過ぎてしまうかもしれない「すし匠」。中澤圭二さんの本格的江戸前すし店だ。ニューヨーク・タイムズの記者が密着して紹介した。

スクリーンショット=2024年11月7日
中に入ると5角形の檜造りカウンター。前菜と握り、お口直しの「おまかせ」コースは1人450ドル(チップ込み)。「お好み」でかんぴょう巻き(10ドル)や赤うにのすし(50ドル)を追加できる。料理を頼めば頼むほど、中澤さんの技の素晴らしさを知ることになる。
中澤さんは、ニューヨークを世界有数のすしの「聖地」に引き上げた伝統的なすし職人の一人。ディテールにこだわることで知られている。特にシャリは3つに分けて炊き、酢の種類と分量も違えるという。この店に25回通ったというマーベルコミックスの編集長、C・B・セブルスキーさんは「銀座すきやばし次郎」の店主、小野二郎さんが「すしの夢を見る」なら、中澤さんは「すしで生き、すしで息をする」と例える。
1962年、東京生まれ。15歳でこの世界に入り、日本橋界隈のすし屋で江戸前に出会う。魚を昆布で巻いたり、塩、酢で締めたりする手法は後に、実は旨味を引き出すことにもなると気づいたという。「生簀から取り出してさばいた活魚が重宝されていたこともあった」と中澤さん。「しかし、100年も前に行われていたことに価値があることに皆、気付き始めた」と話す。
市内の高級ホテル「Andaz 5th Avenue」を買収した竹中工務店の幹部に誘われて昨年3月、ニューヨーク店をオープン。「すしより人を作る方が好き」という中澤さんには「すし屋の人間力」という著書もある。「すし匠」のスタッフは、ソムリエの中澤さんの娘も含めて14人。中澤さんは「職人1人という店が多いが、私の店は専門家の集まり。大きなものが創造できる」と自信をのぞかせた。
編集部のつぶやき
最近のニューヨークでは、すしといえば「おまかせ」が席巻していますが、これってどうなんだろう?と思います。私個人としては、「高いお金を払うのなら、自分が食べたいものを食べたい」って思っちゃいます。「今日は何がおすすめですか?」と客が聞き、職人さんが「今日はこんなネタが入ってますが、いかがですか?」と答えてくれて、「じゃあ、それでお願いします」と、その日のおすすめをいただいて、そこからは自分のペースで、その日食べたいものを食べる方がいいな。確かにサプライズはないけど、(私的には)すしにサプライズは求めていないので。「おまかせ」ってある意味、店側の都合だと思うんですよね。同じような意見の人、周りにとても多いです(全員日本人だけど)。おまかせの高級店は、お金を使わなくなった日本人はほぼ、相手にしていないのでしょうね。(A.K.)
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