「トランプを刑務所に」「アメリカは王政ではない」「イーロン・マスクを(南アフリカに)強制送還せよ」―。
4月5日、全米で約500万人もの市民が「ハンズ・オフ(干渉するな)」というデモに参加した(主催者発表)。トランプ氏が大統領選挙で勝利した昨年11月以来、全米では初と言っていい大規模デモだ。
「ウィメンズ・マーチ」(2017年)、「ブラック・ライブス・マター(BLM、黒人の命は大切だ)」(2020年)など、アメリカではデモが盛んだ。トランプ氏が大統領に就任して2カ月が経ち、遂にトランプ政権に物を申すという市民が立ち上がった。

ドキュメンタリー映画監督のマイケル・ムーア氏は、ブログでこう言う。
「市民が立ち上がる時というのは、みんなが『もうたくさんだ!』と叫びたい時なんだ」
と期待を寄せる。
主催者によると、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴなど全米で1500のデモが計画され、自主的に行われた小さな集会も数百件あったという。
しかし、過去のデモに比べればそれほど大きかったとは言えない。ニューヨークで約6000人、ワシントンでも数千人という規模。2017年、トランプ氏1期目の就任式直後に開かれたウィメンズ・マーチは、ワシントンだけで約50万人が集結した。BLMは、新型コロナウイルス蔓延によるロックダウンの最中であるにもかかわらず、ニューヨークでは連日同時多発的に複数の場所でデモが行われた。つまり、現在のトランプ政権の独裁的な政策・運営に抵抗する勢いは、かつての運動に比べると低迷している。
4月5日のデモも、ベビーブーマーを中心とする高齢者の姿が目立った。BLMの時のよ
うな若者中心ではなく、黒人やヒスパニックといった非白人の姿もかなり少ない。
労働力を支える不法移民の強制送還、大学に対する言論弾圧、学生ビザの停止、相互関税の大統領令など市民生活を圧迫する政策で暴走するトランプ氏。恐怖から、積極的にデモに参加し、声を上げることができない人々がいる。
「同僚が来たいと言っていたが、夫に反対されて来られなくなった。彼女のためにここに来た」
と打ち明ける参加者も。マーチから離れた歩道で見守っていた。
連発される大統領令に振り回される市民やビジネス。先行き不安から混乱するマーケット。私たちは、いまだかつてない混迷期を目の当たりにしている。(写真と文 津山恵子)

津山恵子 プロフィール
ジャーナリスト。専修大文学部「ウェブジャーナリズム論」講師。ザッカーバーグ・フェイスブックCEOやマララさんに単独インタビューし、アエラなどに執筆。共編著に「現代アメリカ政治とメディア」。長崎市平和特派員。元共同通信社記者。
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