欧州連合(EU)は今月、紫外線に当たると硬化を促進しジェルネイルの持続性を高める化学物質「 TPO(トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)」を、生殖毒性の恐れがあるとして禁止した。一方、アメリカでは規制の気配すらない。ウォール・ストリート・ジャーナルが11日、伝えた。

高用量のTPOを摂取させた動物実験で、不妊や胎児の発育異常、肝臓や腎臓への影響が報告された。ただ、実験は経口摂取によるもので、ネイル施術で受ける量とは比較にならないほど高濃度だ。また、ネイルが乾けば吸収や吸入のリスクはなく、時折の使用であればリスクは極めて低い。
EUは、少しでも有害の可能性があれば禁止する原則を採用しているが、アメリカではFDAが規制する成分はわずか11種類。多くの化粧品成分は事前承認なしで市場に出回る。この差も、今回の対応の違いにつながっている。しかし、リスクは長時間の曝露ほど高まる可能性があり、ネイリストへの影響には疑問が残る。
専門家は、①ジェルネイルは特別な日に限定する ②施術の合間に1〜2週間爪を休ませる ③日焼け止めでUV対策をする ④ジェルを無理に剥がさないといった防衛策を推奨。
ミシガン州立大学の毒性学教授は「妊娠中は控えるのが望ましいが、過剰に心配する必要はない」と指摘。気になるなら「TPOフリー」製品を選ぶのも一案だ。
日本は「化粧品扱い」と「雑貨扱い」で対応
日本の厚生労働省が現時点でジェルネイルの関連製品に含まれるTPOを規制しているとの情報はないが、同省は2020年5月、ジェルネイルの関連製品について次のような見解を発表している。
1、ベースジェルについては、直接、爪に塗布することから化粧品に該当する
2、カラージェルやトップジェルについては、ベースジェルを硬化させた人工爪に塗布するという使用方法等から、直接、爪に塗布しないことが明らかであれば、化粧品に該当しない。ただし、カラージェルやトップジェルの名称であっても、使用方法等から、直接、爪に塗布しないことが明らかではない場合は化粧品に該当する
このように、ジェルネイルで使用される製品には「化粧品登録されているもの」と「雑貨扱いのもの」があり、化粧品登録されているジェルは、厚生労働省の基準をクリアした成分のみで作られており、一定の安全性が保証されている。一方、雑貨扱いの格安ジェルは成分の表示義務もないため、アレルギーなどのリスクが懸念される。安価なジェルネイルは成分が表示されていなかったり、品質管理が不十分だったりする場合もあるので、ネイルサロンを選ぶ際は化粧品登録されているものを使っているかを確認することが重要だ。
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