2026年1月8日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

山田順の「週刊:未来地図」「資産フライト」(キャピタルフライト)再び。 この予算では円安は止まらない!(下)

2011年「資産フライト」はなぜ起こったのか?

 私が「資産フライト」(文春新書)を書いたのは、2011年、あの東日本大震災の年である。当時、ドル円がなんと70円台を記録するなど、いまとなれば信じられないことが起こっていた。なにしろ、民主党政権は円高を阻止するためにドル買いの為替介入をしたくらいである。
 それなのに、資産家はもちろん、一般サラリーマンからOLまで、日本円を持ち出して、海外のオフショアの銀行(香港のHSBCなど)に預金するのがブームになっていた。それを「資産フライト」と命名し、各方面に取材したルポが、私の本である。
 ではなぜ、「資産フライト」が起こったのか?
 それは、日本の先行きに不安があったからだ。経済衰退が続き、それとともに間違いなく円安になる。ならば、いまのうちの外貨(主にドル)に替えて置こうという動きである。
 しかも、日本円で預金していても金利はほぼゼロ。複利
もない。所得税、キャピタルゲイン課税も高い。投資信託(ファンド)などの金融商品も少なく手数料も高いという「金融ガラパゴス」が、当時の日本だったからだ。

「新NISA」が引き起こした新たな資産フライト

 この資産フライトは、その後、海外資産の課税の強化、世界各国の税務情報の交換制度の確立、出国税の強化などで下火になった。
 しかし、コロナ禍後の円安の進行と、「貯蓄から投資へ」ということで導入された「NISA」(少額投資非課税制度)が、2024年1月から大幅に制度改善(「新NISA」)されたことで、再びブームになった。
 ブームといっても前回とは違い、海外に直接、円を持ち出すわけではない。日本の金融機関を通して、外貨預金をする、海外証券に投資するなどのやり方である。これは、直接的な資産フライトではないが、円資産を外貨資産に替える点は同じである。

対外証券投資は2017年以降一貫して黒字

 新NISAの「つみたて投資枠」および「成長投資枠」での人気は、米国株及び「S&P500」あるいは「オール・カントリー・ワールド・インデックス」(通称「オルカン」)である。円も持っていても目減りするだけなので、ドルに替えて投資するわけだ。
 対外証券投資の統計を見ると、コロナ禍の2年間をのぞいて2017年以降は一貫して黒字を記録している。これは、
日本から海外へ資金が流出していることを示している。
 この黒字は、2024年に「新NISA」がスタートしてから、より一層顕著になっている。
 この流れを止めない限り、つまりバラマキ財政によって円の価値を毀損するのをやめない限り止まらない。

この続きは1月9日(金)に掲載します。 
本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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