日本も顕著、世界中で進む「ハリウッド離れ」
「洋楽離れ」と同じく「洋画離れ」も世界中で起こっている。日本の場合は、現在、国産映画が約7割、洋画が3割という「邦高洋低」の市場になっていて、ハリウッド作品はほとんどヒットしなくなった。
今年は、邦画『国宝』が興行収入173億7700万円余りを記録し、実写邦画の記録を22年ぶりに更新し、アニメの定番『名探偵コナン』や『ドラえもん』などのシリーズも例年通りヒットした。それに比べて、ハリウッドの定番『ジュラシックワールド4』『ミッションインポッシブル8』は不調だった。
コロナ禍前の2019年には、興収100億円を突破した映画が4本あったが、そのうちの3本が洋画(『トイ・ストーリー4』『アナと雪の女王2』『実写版アラジン』)だった。しかし、以後、洋画のヒット作品はない。
こうした日本より、世界の主要な映画市場、中国とインドでは、国産映画のシェアが8割~9割になり、ハリウッド作品はほとんど見られなくなった。
中国政府は外国映画の年間上映本数を約34本に制限しているが、それでもかつてはハリウッド作品『アベンジャーズ/エンドゲーム』『ズートピア』『アバター』などがヒットした。しかし、それはいまは昔のこと。今年は、国産アニメ『ナタ 魔童の大暴れ』(ナタ2)が爆発的なヒットを記録し、中国国内だけで約1545億元(約3115億円)のアニメ映画史上最高額を記録している。
コロナ禍とAIが加速させたハリウッドの衰退
世界の映画市場は、これまで北米市場が牽引してきた。北米市場でヒットすれば、世界市場でもヒットした。しかし、こうした「ハリウッドの時代」は2020年のコロナ禍とともに崩れ去り、それがいまだに回復していない。
ハリウッドの映画産業は、現在、最悪の状況を迎えている。コロナ禍はアメリカの映画、テレビなどのエンタテイメント業界を直撃し、業界人口はほぼ半減した。また、生成AIの普及でリストラが起こり、それに対抗するストライキもあって、ハリウッドは疲弊した。
さらに、映画館で映画を観るという習慣が、配信へのシフトで急速に薄れてきたことも、アメリカ映画の衰退を招いた。そんななか、ほかの業界と同じく、「トランプ関税」が追い討ちをかけている。過去のヒット作のシリーズものばかりになったことも、業績の悪化を招いている。
このクリスマスシーズンは『アバター』シリーズの第3弾『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が封切られるが、これがコケたら、ハリウッドの衰退は決定的になる。
ソフトパワーの源泉は自由で開かれた社会
音楽も映画も、アメリカの世界覇権を支えてきた大きな力だった。こうしたソフトパワーがなければ、第2次大戦以後の国際秩序は形成されなかっただろう。
世界は、アメリカ文化、アメリカ文明を取り入れ、それを消費することに多大なコストを払った。
アメリカのソフトパワーの源泉は、民主的で法の支配に支えられた、自由で開かれた社会にある。アメリカは「自由の国」(land of freedom)であり、また「人種のるつぼ」(melting pot)である。それだからこそ、そこで生まれた音楽、映画などに世界は憧れ、それを取り入れてきた。
ソフトパワーの命名者は、ハーバード大学名誉教授で国防次官補などを務めた故ジョセフ・ナイである。彼は、トランプ政権の行動様式を「ソフトパワーの破壊」と評した(日本経済新聞5月3日記事)
ソフトパワーは、軍事力や経済力と違って、それを享受する人々を魅了し、自然にアメリカに従わせる。それをトランプは破壊している。
大学・言論の弾圧で破壊されるアメリカ文化
トランプは様々な点で民主制度を破壊しているが、その最たるものは、2020年のトランプ支持者による議会襲撃事件で有罪とされた人々に、大統領に再選されるや恩赦を与えたことだろう。これにより、民主制の根幹、「三権の分立」は失われた。アメリカは法が支配する「自由な国」ではなくなった。
トランプはいまややりたい放題で、移民の弾圧を手始めに、大学の弾圧、言論の弾圧まで行っている。
トランプは、最近、政権に批判的な報道機関や記者を名指しで非難するウェブページ「恥の殿堂」(Hall of Shame)立ち上げた。これは完全な言論弾圧で、中国共産党が行っていることと変わらない。
このままトランプのやりたい放題の独裁が続けば、アメリカは内側から破壊される。アメリカのソフトパワーは失われ、アメリカ文化に対する憧れは雲散霧消する。(了)
【読者のみなさまへ】本コラムに対する問い合わせ、ご意見、ご要望は、
私のメールアドレスまでお寄せください→junpay0801@gmail.com

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
RECOMMENDED
-

客室乗務員が教える「本当に快適な座席」とは? プロが選ぶベストシートの理由
-

NYの「1日の生活費」が桁違い、普通に過ごして7万円…ローカル住人が検証
-

ベテラン客室乗務員が教える「機内での迷惑行為」、食事サービス中のヘッドホンにも注意?
-

パスポートは必ず手元に、飛行機の旅で「意外と多い落とし穴」をチェック
-

日本帰省マストバイ!NY在住者が選んだ「食品土産まとめ」、ご当地&調味料が人気
-

機内配布のブランケットは不衛生かも…キレイなものとの「見分け方」は? 客室乗務員はマイ毛布持参をおすすめ
-

白づくめの4000人がNYに集結、世界を席巻する「謎のピクニック」を知ってる?
-

長距離フライト、いつトイレに行くのがベスト? 客室乗務員がすすめる最適なタイミング
-

機内Wi-Fiが最も速い航空会社はどこ? 1位は「ハワイアン航空」、JALとANAは?
-

「安い日本」はもう終わり? 外国人観光客に迫る値上げラッシュ、テーマパークや富士山まで








