
イラスト Jay
日本人にしてはたぶんやや顔の彫りが深め、それに目もややパッチリめ。そのためだろうか、ニューヨークにいる間は幾度となく南米人に間違えられてきた。ストリートで「オーラ、アミーゴ!」とスペイン語で話しかけられることもしばしば。その度「ハポネ(日本人)だよ」と答えるや「またそんなこと言ってアミーゴ」とさらに親しげにされることもあった。
そんな見た目はややアミーゴっぽくもあるぼくが羽田着で帰国してから12時間ほどが過ぎた。東京の品川で友人と待ち合わせがあり、近くでランチをということになって、スーツケースを引きずり、駅ビルのエスカレーターに乗って、レストランフロアに着くと友人はあるレストランを指差した。
「あ、サラベス!」
「What?」
またしてもニューヨークの店だ。あれは紛れもなくセントラルパークサウスにあるエッグベネディクトで超有名な。
「えーっ、そうですねぇ」
心なしかうれしそうな友人の顔を横目でチラリとうかがい、その上できるだけさりげなく相づちを打った。女性というのはやはりこういうのに興味を持つのだろうか。「しかしやはりここは日本のオーセンティックな」と声には出さなかったが、さすがにニューヨークから日本へ帰ってわずか12時間の間にディーン&デルーカでコーヒー飲んでサラベスでエッグベネティクトというのも…。
「もう少し見てみませんか」
友人を促しもうしばらく歩き回ってみた。
すると今度は外壁に石が積まれた店が目に入った。しかもそれらはアーチ状に石が積まれている。石がアーチ状…。もしやつい数日前まで利用していたニューヨークのランドマークとも言えるあの? 店名を見てみると「グランド・セントラル・オイスターバー」そのまんまだ。うーん何というか、やはり違和感は否めない。素晴らしいものを欧米から持ち込んでくるのも良いが、日本といえばその唯一無二としか言いようのないユニークな文化こそ今や世界中からの垂涎の的でもある。もっとこう何というか、せめて〝ジャパンカルチャー〟のシンボルでもある食文化をもっと上手くフューチャーさせることは考えないのだろうか、とひとり熱く想いを巡らせているうちに視線がピタリと止まった。
「Oh, what a…」
店頭に置かれた実においしそうな料理。その艶やかな照り。もうどうにもそこから目を離せなくなってしまったぼくは、
「ここにしましょう!」
と、本物よりおいしそうなディスプレイに惹き寄せられるまま、女性たちでにぎわう洋食屋へと入っていった。
おわり

Jay
シェフ、ホリスティック・ヘルス・コーチ。蕎麦、フレンチ、懐石、インド料理シェフなどの経験を活かし「食と健康の未来」を追求しながら「食と文化のつながり」を探求する。2018年にニューヨークから日本へ拠点を移す。
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