障害を持つ人が小売店や飲食店を訴える例が最近増えています。今回は訴訟が起きる理由とその対策について簡単に説明します。
Americans With Disabilities Act (米障害者法)
通称「ADA」と呼ばれるこの法律は、障害者の権利保護を目的に1990年に制定されました。小売店や飲食店、ホテルなどは公共施設(Public Accommodation、この公共とは一般の人が使うという意味で、私企業も含む)の1つとしてADAの適用対象となっています。
ADAの最大の目的は、障害者が健常者と同様、公共施設にアクセスできるようにすることで、既存の古い建物を含む全ての公共施設が対象です。そのため、店の入り口に階段があったり、車椅子が入れないような狭いドアだったり、通路が狭すぎて車椅子が通れないといった場合はADA違反となります。しかし、例えば経費面から飲食店の入り口をアクセスできるように改装できない場合は、入り口にブザーを付けて来客時に分かるようにする、またその際に取り外しができるスロープを付けて車椅子が通れるようにする、などといったReasonable Accommodation(合理的配慮)があれば違反にはなりません。しかし新築物件に関しては、ADAが定める基準を満たす必要があります。
障害者による訴訟
ニューヨーク州を含む米国各地で、公共施設がADAの定める基準を満たしていないとして、訴訟が起きています。それも原告1人が一度に何十件もの店を訴える例が多く、日本人が経営する小売店や飲食店も対象になっています。
古くから商売をしている店が訴えられることが多いようですが、中には開店したばかりの店が対象となる場合もあります。不動産業者がADAに関する知識がなく、建設・内装業者も的確なアドバイスができない場合もありますので、要注意です。また、ADAは車椅子の人だけでなく広い範囲での障害をカバーするため、最近では、ウェブサイトが視覚障害者の使うソフトに対応できていないのは違法などと訴えられる例も見受けられます。
ウェブサイトに関しては、視覚障害者のソフトに対応するのはそれほど難しくないようです。起業や開業に向けて専用のソフトウェアを準備することをお忘れなく。
今月のお店
Yanni’s Coffee
96 7th Ave. (bet. 15th & 16th Sts.)
www.instagram.com/yanniscoffee/?hl=en
チェルシーの7番街に面したカフェ。 コーヒーやカプチーノなどの他に抹茶ラテも。チョコチップとくるみが入った自家製クッキーが自慢。チリチーズクロワッサンはボリュームたっぷり。
飯島真由美 弁護士事務所
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NY州認定弁護士。法政大学文学部、NY市立大学ロースクール卒業。みずほ銀行コンプライアンス部門を経て独立。2010年に飯島真由美弁護士事務所を設立。家庭法、訴訟法、移民法など幅広い分野で活躍中。趣味はカフェ巡り。