植物状態の患者生かし続ける  生存率保持し、補助金獲得図る

 ニュージャージー州ニューアーク市のニューアーク・ベス・イスラエル病院が、臓器移植後の生存率を高く保つため、回復の見込みがない植物状態の男性を生かし続けていたことが明らかになった。調査報道のプロパブリカが3日、報じた。
 米海軍の元軍人、ダリル・ヤングさん(61)は2018年9月21日、同院で心臓移植を受けた後、植物状態に陥ったが、同病院はヤングさんの家族に、ヤングさんが回復の見込みがない植物状態であることを知らせず、人工呼吸器と栄養補給チューブにつないで延命。ヤングさんが、肺炎や脳卒中、感染症を起こした際には積極的な治療を続けていた。
 手術の1カ月後、ヤングさんの意識が戻らないことを不審に思った家族が医師に問いただしたところ、医師は、ヤングさんが脳に損傷を受けていることを伝えたという。
 医師と看護師の会議の中で、同病院の心臓・肺移植部門のディレクター、マーク・ザッカー医師が、「ヤングさんには少なくとも6月30日までは生きていてもらわなければならない」と発言。別の医師が密かに録音していた音声記録により今回の事件が発覚した。6月30日は移植患者の生存率を連邦政府に報告する期日だった。
 同病院は近年、心臓移植患者の生存率が下降傾向で、植物状態の患者の延命は、連邦からの補助金減額を恐れての措置と見られる。
 プロパブリカによると、ヤングさんの他にも3人の植物状態の患者が生かされていたという。

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