連載472 山田順の「週刊:未来地図」なぜ「医療崩壊」? そしてついに「命の選別」に。 医療者も患者も見殺しの絶望ニッポン(中)

コロナ患者は3グループに分かれ隔離

 ところで、感染拡大がいくら欧米並みになってきたと言っても、日本の感染者数、死亡者数は、まだまだ欧米諸国(アメリカ、英国、ドイツ、フランスなど)に比べて圧倒的に少ない。だから、なぜ「医療崩壊→医療倫理の崩壊」が起こるのか、疑問に思う方も多いと思う。

 そこで、日本の新型コロナ感染症の診療システムがどのようになっているのか、まず確認しておきたい。

 PCR検査により新型コロナの感染が確認されると、感染者は3つのグループに分けられる。まずは、症状がないかあるいはごく軽い患者で、この人たちは主に「自宅療養」か「ホテル療養」(隔離)となる。次に軽症・中等症の患者で、この人たちは各地域の協力病院(受け入れ可能な医療機関)に入院・隔離される。

 最後は、人工呼吸器を取りつけなければならないような重症患者だが、この人たちは感染症の指定病院に入院・隔離される。この指定病院は全国各地にあるが、その数は圧倒的に少ない。指定病院には「第一種指定」と「第二種指定」があり、たとえば、東京都の場合、両方合わせて11機関しかない。また、地方では、1県に1機関というところもある。

なぜ病院はコロナ患者を拒否するのか?

 もちろん、療養ホテルも協力病院も少ない。それは、日本の病院の約8割が民間病院であり、ほとんどが診療所だからだ。どこの街にもある、いわゆる「町医者」は、ほぼ診療所である。

 ひと口に医療機関と呼んでいるが、医療機関は医療法という法律によって2種類に分類されている。それが「病院」と「診療所」で、病院は患者が入院できるベッドの数が20床以上ある医療機関のこと。19床以下を診療所と呼んでいる。病院と診療所(一般診療所と歯科診療所)を合わせた日本の医療機関の合計数は17万9303施設で、その内訳は、病院が8255施設、一般診療所が10万2776施設となっている(2020年6月現在)。

 そして、これらの医療機関の約8割が医療法人を含む民間の私立病院である。民間病院ということは、赤字を出していては存続できない。そのため、国や自治体がいくら要請しても、コロナ患者の受け入れを拒否するところがほとんどなのである。

 ちなみに、ドイツは、公立病院が37%、非営利病院(財団や慈善団体など)が40%、営利の民間病院が23%である。また、アメリカは、政府系病院が20%、非営利病院が62%、営利の民間病院は18%である。

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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