連載605 山田順の「週刊:未来地図」 「カーボンニュートラル」(脱炭素)で、日本経済は低迷、国民はさらに貧しくなる(完)
日本は物価は安いのに電気代は高い
(この記事の初出は6月15日)
カーボンニュートラル達成のためには、炭素税のような新しい税金を創設する必要がある。ひと口に再生可能エネルギーへの転換と言っても、風力発電、洋上発電、太陽光発電などに莫大な投資が必要になる。はたして、コロナ禍から脱出するのにG7でもっとも遅れたこの国に、そんな余力はあるだろうか。
現在、カーボンニュートラルへの投資は民間企業だけではまかなえない。となると、東日本大震災後に復興特別税をつくったように、国民に新たな税を課すか、国債の大量発行をするほかない。
そうすれば、産業の空洞化が進み、それとともに日本経済はますます落ち込み、国民は貧しくなるばかりだろう。
現在、日本は先進国(いやもう先進国とは言えない)では、もっとも物価が安い。しかし、公共料金、とくに電気料金は高い。1kWhあたりの家庭用電気料金は約23~24円で、アメリカの約13~14円に比べるとかなり高い。ただし、再生可能エネルギーに邁進するドイツの約35~36円よりは安い(電力中央研究所のデータ)。
問題は産業用電気料金で、日本は1kWhあたり17~18円で、ドイツの15~16円を上回り、アメリカの約8円の倍以上もする。
そこに、再生可能エネルギーへの転換がやってくるのだから、さらに電気料金は上がる。
再エネ100%だと電気代は2倍以上に
日経新聞の記事『緑の世界と黒い日本「再生エネが最安」電源の主流に』(2021年3月1日)によると、 発電所を新設した場合どの電源がいちばん安いかを、国・地域ごとに調べたところ、再生可能エネルギーがもっとも安い国が多数を占めたとなった。 1世帯が4カ月間に使う1000kWh時の電気をつくる場合、中国は太陽光が最安で33ドル、アメリカは風力が最安で36ドルだった。ところが、日本はというと、もっとも安い電源は石炭火力で74ドルもし、太陽光は124ドル、風力は113ドルと驚くほど高い。
これで、日本はどうやって脱炭素社会の実現を目指すのだろうか? すべての電力を再生可能エネルギーに切り替えたら、日本は潰れてしまうだろう。 経産省は、5月13日、エネルギー政策を検討する「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」(第43回)において、2050年までに再生可能エネルギーを大量導入した場合、電気代がどれだけ値上がりするのかの試算を公表した。
それによると、再生可能エネルギー100%だと、電気代は1kWhあたり63.4円になるという。現在の平均的な電気代を1kWhあたり26円程度としているので、なんと2倍以上も跳ね上がることになる。
菅政権はコロナ対応を見ても、現実を無視して口先だけである。おそらく、これはカーボンニュートラルでも同じだろう。できっこないのに、「SDGs」などど、この首相は平気でペーパーを読み上げる。 このままでは、この国から人も企業もどんどん出ていくほかないのかもしれない。
(了)
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【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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