連載792  今秋、日本経済に訪れるメルトダウン 「失われた30年」から「どん底の30年」へ (下)

連載792  今秋、日本経済に訪れるメルトダウン 「失われた30年」から「どん底の30年」へ (下)

(この記事の初出は5月17日)

 

近所のスーパーで見かける買い物の変化

 コロナ禍になってから、私の外出は極端に減った。ただ、近所のスーパーや食品店などにはよく行く。家内に代わって、料理をつくるのを楽しむようになった。
 そんななかで最近よく見かけるのが、「7月1日より値上げします」「6月いっぱいは値上げしません」という貼り紙だ。
 また、スーパーでは食品を手に取っては見比べ、買い物カゴに入れない人が増えた。また、価格が安いプラベートブランドばかり買っている人が増えた。
 近所のパン屋では、私がよく買うライ麦ブレッドやバケットが、いつの間にか20円値上げされていた。そういえば、高級食パンのブームが去り、手作りを売りにした小さなパン屋の多くが潰れているという報道があった。
 家計の収入が増えないなか、商品やサービスの価格だけが上昇すれば、人々は購入するモノの量を減らすか、同じモノでも価格を下げて購入するほかない。たとえば、これまで買っていた100%ピュアなイタリアブランドのオリーブオイルより、スーパーのプラベートブランドのオリーブオイルを買うだろう。そうなれば、オーガニックブームもいずれ去る。価格が高いオーガニック食材ばかり買っていられない。
 こうして、毎日の生活は貧しくなる。消費は低迷し、それが企業の売上にも影響を与え、構造的な不況はどんどん進んでいく。

 

「リベンジ消費」はもう起こらない

 先日のGW、 テレビは、堰を切ったように行楽地の状況を伝えた。「3年ぶり“行動制限なし”のGWハワイ観光に変化」「東京駅は4割増。コロナ前上回る地域も」「京都・嵐山の人出は前年比で163%増」など、ウクライナ戦争とはまったく違う、各地のにぎわう光景が映し出された。
 私の住む横浜もすごい人出だった。とくに、みなとみらい、中華街、元町は、どこに行っても飲食店は満員で行列ができ、街はカップルや家族連れであふれた。
 しかし、あれから10日あまり、ウイークデイの街はGWの人出がウソのように閑散としている。行列ができていた飲食店はガラガラだ。
 GWのにぎわいは一時的なもので、コロナ禍で抑えられてきた行楽が一時的に戻っただけのようだ。
 アナリストたちは、アフターコロナには「リベンジ消費」が起こり、人々はこれまで我慢していた消費・行動意欲を爆発させると言ってきたが、そうなっていない。コロナ禍が完全に収束しても、リベンジ消費など起こらないだろう。
 コロナ禍で人々の行動様式は、すっかり節約型になり、それに物価上昇による消費の冷え込みが輪をかけている。テレワークが状態化して出社しない人間が増え、さらに東京を脱出して郊外に移住する傾向も強まった。2021年、東京23区は転出者数が転入者数を1万4828人上回り、初めて「転出超過」となった。


(つづく)

 

この続きは6月20日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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