2023年2月2日 NEWS DAILY CONTENTS COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

連載936 次の投資先はインドとの声強まる。 中国を抜いて「世界の工場」に!は本当か? (下)

連載936 次の投資先はインドとの声強まる。
中国を抜いて「世界の工場」に!は本当か? (下)

(この記事の初出は1月3日)

 

アップルが「iPhone14」をインドで製造

 インド経済の先行きに対して、投資家が注目した出来事がある。
 それは、2022年10月に、アップルが最新モデルの「iPhone14」の製造の一部をインドで行うと発表したことだ。これには、多くの投資家、メディアが驚いた。いくらIT産業が集積しているとはいえ、インドが最適地と言えず、これまで撤退したITビジネスも多いからである。
 アップルの発表を具体的に見ると、iPhoneをはじめアップル製品の製造のほとんどを請け負っている台湾の鴻海(ホンハイ:フォックスコン)がチェンナイ郊外の製造拠点で「iPhone14」の製造に着手するという。 アップルは2017年にインドでのiPhoneの製造を開始したが、製造ラインは古いiPhoneモデルに限定されていた。それを一新するというのだ。これにより、iPhoneの最新モデルがインドでも生産されることが確定した。
 中国からインドへ。なぜ、アップルは大きくシフトするのか? それは、生産コスト、製造技術、サプライチェーンの問題も大きいが、インド市場が今後拡大するとアップルが考えたからだろう。
 つまり、アップルは今後インドでも「iPhone14」が売れると判断したようだ。これは、画期的なことである。
 なぜなら、2021年のインドのスマホ市場におけるアップルのシェアは、たったの3.8%に過ぎないからだ。日本の47.0%と比べたら、この数字は圧倒的に低い。

あらゆる製造業がインドに集積中

 インドでは、サムスン(韓国)やシャオミ(中国)などの低価格スマホが、いま、シェアを独占している。しかし、今後は、アップルのような高価格スマホも売れるのは間違いないという。それを裏付けるのが、1人当たりのGDPの伸びと、個人消費の旺盛さだ。
 これに、アップルは乗った。実際、インドでは、旧機種となったとはいえ「iPhone13」の売れ行きはいいという。
 米CNBCの報道では、2023年中に「iPhone14」製造の全体の5%がインドにシフトされるという。また、2025年までに、アップルはiPhoneの最新モデルの製造の25%をインドに移管するという。また、別の情報によると、アップルはインドでの最新モデルの製造を75%まで引き上げるという。
 インド経済は、もともと農業中心の経済である。労働力人口の3分の2が直接あるいは間接的に農業で生計を立てている。しかし、ここ十数年で急速に工業化が進み、製造業が大きく発展した。自動車、自動車部品、電子部品から半導体、ハイテク製品、工作機械、そして医薬品まで、インドにはあらゆる製造業が集まってきている。

日本を抜き世界第3位になる自動車市場

 インドの製造業というと、日本人なら誰もが思い浮かべるのがスズキの自動車だろう。スズキはインド国内メーカーの「マヒンドラ」や「タタ」、韓国の「ヒョンディ」といったメーカーを抑え堂々のシェア1位を獲得しており、そのシェア率はなんと約43%(2022年4月)である。インドで走っているクルマの2台に1台がスズキというすごさだ。
 こうしたインドの自動車産業をはじめとする製造業を支えるのが、「Make in India」というコンセプトだ。これは、モディ政権が掲げる政策で、インドを世界の製造業の中心拠点にしようというものだ。
 インドにおけるクルマの販売台数は、コロナショック発生直後に激減したが、いまやすっかり回復している。インドの自動車産業の市場規模は2021年時点で日本に次ぐ世界第4位。
 2022年は、確定値がまだ出ないので推測にすぎないが、日本を抜いて世界第3位になることが確実視されている。

株価は絶好調だが通貨ルピーは最安値更新

 インド経済の好調さを反映するのが、株価だ。
 インドの株価は、2020年春のコロナショック発生時に大きく下落したが、その後、ロシアやブラジルを上回る勢いで急速に回復し、過去最高値を更新しながら上昇してきている。
 それに伴い、ウオール街のファンドレポートもインド株投資を推奨するものが多くなった。
 インド株といえば、「SENSEX指数」(センセックス)で、これは、インド最大のボンベイ証券取引所に上場する30銘柄で構成される時価総額加重平均指数だが、この2年間でほぼ1.5倍になっている。
 2010年以降の推移を見ても、短期的な下落・停滞があるものの、完全に上昇トレンドにあり、この10年ほどで、なんと4倍ほどになっている。
 2010年時点のSENSEX指数は15,000INR(インド・ルピー)だったが、2022年12月末時点は60,500NRだ。
 ただし、株価は好調も通貨ルピーは2022年10月中旬に、1ドル82ルピーを超え史上最安値を更新した。これは慢性的な貿易赤字とFRBの利上げを反映したものだが、他の主要新興国通貨に比べれば下落幅は小さい。
 日本円の大幅下落に比べたら比較にならず、ルピーは思いのほか安定していると言える。また、ルピー安は、今後のインドの輸出経済の追い風になる。


(つづく)

この続きは2月3日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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