2023年3月3日 NEWS DAILY CONTENTS COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

連載953 金融バブルの崩壊は近いのか? 「リスク資産」を捨て「実物資産」に切り替えるとき (完)

連載953 金融バブルの崩壊は近いのか?
「リスク資産」を捨て「実物資産」に切り替えるとき (完)

 

「ミンスキー・モーメント」がやって来る 

 今後、金融バブルの崩壊が必ず起こると言い続けている投資家がいる。ヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者レイ・ダリオだ。 
 すでに彼は、コロナショックの前、コロナなコの字もなかった2019年の11月に、「ミンスキー・モーメント」(Minsky Moment)という経済用語を用いて、「世界はいま非常事態にある」と投資家向けに警告した。
 ミンスキー・モーメントとは、簡単に言えば、バブルが弾けて崩壊に転じる瞬間のことだ。 
 エコノミストのハイマン・ ミンスキーが、金融の不安定性を説いた金融循環論のなかで唱えたことで、多くの投資家がこれを警戒してポジションを取っている。
 景気がいくらよくなろうと、債務が増加すれば、過剰な資産形成から、やがて資産価値が下落する局面(バブル崩壊)が必ずやって来る。景気が悪くなれば、なおさらだ。
 これが、ミンスキー・モーメントで、2008年のリーマンショックもミンスキー・モーメントだった。「バブルがいつ弾けるのか、それを予測することは誰にもできない。ただ、バブルは必ず崩壊する」と、経済学者のジョン・ガルブレイスもかつて言っていた。
 コロナショックによるNY株の暴落が起こったとき、多くの経済人が、これはミンスキー・モーメントがやってきたと思った。しかし、それは政府の大胆な財政出動で先送りされてしまった。しかし、あくまで先送りで、問題が解消されたわけではない。時限爆弾のスイッチは入ったまま時刻が先送りされただけだ。

「価値」の保存ができない世界になるのか?

 昔の投資家は、株が暴落すれば、安全資産であるとされた債券に逃げた。しかし、この債券の最たる国債が、日本ではもっとも危険で、暴落(金利急上昇)寸前である。
 いまのヘッジファンドは、投資先別に細分されていて、それぞれ行動原理が違う。しかし、いったん崩壊が始まれば、すべてのリスク資産が暴落するだろう。
 インフレだから、現金がもっともリスクがある。株式、投資信託、不動産などの権利だけを保持している資産も危ない。よく最後の拠り所はゴールド(金)だとされるが、これも現物ではなく権利だけを持っているだけなら危ない。
 となると、最後の拠り所は、天然資源そのもの、食料品となる農産物そのものかもしれない。いわゆる「実物資産」(ブツ)である。
 結局、資産(価値あるもの)を“持っている”人間にとって、最大の問題は、それをどうやって安全に保存するかだろう。私のような“持っていない”人間にとっては関係ない話だが、資産家にとってのバブル崩壊=暴落は、一夜にして財産を失う大問題である。
 よって、資産の置き場所をどこにするかが、最大の関心事だ。ただ、これに対する明確な答えはない。
 もし、バブル崩壊が近いと考えるなら、ほとんどの金融商品は売ってしまい、その代金は現金として引き出さず、信託財産として預けておくことである。そうしておけば、払い戻し制限や預金封鎖などの影響は受けず、バブル崩壊後の世界で再投資が可能だ。


(了)

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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