日本では「知らんけど」アメリカでは「Meh」 選挙の形骸化で崩壊する民主主義 (完)

日本では「知らんけど」アメリカでは「Meh」
選挙の形骸化で崩壊する民主主義 (完)

(この記事の初出は2024年1月9日)

「ネット投票」が実現しない本当の理由

 次は、ネット投票である。自民党の「裏金問題」が発覚して以来、政治改革が叫ばれているが、その方法として、政治資金規正法の改正や資金のデジタル化などより、「ネット投票」の導入のほうが有効ではないかという声が上がっている。
 ネット投票により、多くの有権者が手間をかけることなく投票できれば、民意は反映される。少なくとも、カネによって政治が左右されることはなくなるだろうというのだ。
 しかし、いま世界で国政レベルの選挙でネット投票を行っている国はエストニア、だった1国しかない。エストニアではネット投票が導入されて10年以上立つが、それにより投票の利便性がまし、投票率も上がった。
 ところが、なぜかデメリットばかりが強調され、現在まで導入する国は出ていない。検討はされても、「本人確認ができない」「投票の秘密を保持できない」「システムの安全性が保てない」「通信障害が起きたらどうするのか」「データが改ざんされる可能性がある」などということが言われ続けているのだ。
 しかし、これらは現在の技術でほぼ解決できる問題で、本当の反対理由は別のところにある。
 たとえばアメリカでは、共和党も民主党も現職議員はほとんど反対である。
 それは、有権者登録、選挙所での投票など、投票が面倒で不便にしておくことで、黒人層、低所得者層、若者が投票を控えることが多いからだ。日本も同じで、ネット投票になれば、SNS時代のいま、既存の勢力図は大きく変わる可能性がある。おそらく、与野党とも現職議員は、いまのような政治活動では再選が難しくなる。
 実際、エストニアではネット投票導入後、第三党が政権を取るなど政界が激変した。これは現職にとって「不都合な真実」である。

変わらなければいけないのは国民自身

 2024年は、日米ともに国家の将来を決める重要な選挙がある。日本の場合、このまま衆議院議員が任期満了となるのは2025年だが、9月に自民党の総裁選があるので、その前の解散の可能性は高い。また、いまの岸田内閣のボロボロの状況から見て、総選挙は間違いなくあるだろう。
 アメリカの場合、なんといっても今年は大統領選挙イヤー。11月には、次期大統領が決まる。
 日本では政治資金の透明性の確保が叫ばれ、アメリカでは、民主共和でない第3党の必要性が叫ばれている。
 しかし、日米とも、国民の半数が選挙に行かない現実を変えなければ、なにも変わらない。現在の混迷は続くだけだ。結局、変わらなければいけないのは、政治と政治家ではなく、私たち国民、有権者のほうである。

(了)

 

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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