奇跡的復興を遂げたと思ったら長期衰退
日本の不思議はまだ続く。敗戦は決定的だったにもかかわらず、あっという間に復興し、戦争の荒廃から約40年でアメリカを凌ぐほどの世界第2位の経済大国になった。
日本は奇跡的な復興によって、再び世界の頂点に立った。
ところが、バブル崩壊すると、今度は30年以上にわたって衰退し、今日に至っている。
成長と衰退をこれほどのスピードで繰り返した国が、世界にあるだろうか。普通は、いったん頂点に経てば、よほどの失敗がない限り、繁栄は長続きする。しかし、日本はそうはならなかった。
近現代史から見えてくる日本は、まさに「不思議の国ニッポン」である。日本人の私でさえ、なぜ日本がこんな近現代史を歩んだのか、不思議でたまらない。
「西欧先生」の忠実な生徒としての近現代史
マアルーフは、日本の不思議な近現代史を、40年おきの世代交代に失敗したからと述べている。前の世代の成功を次の世代が食いつぶす。それの繰り返しだというのだ。
たしかに、その通りと言える。
ただ、私が付け加えたいのは、日本は学ぶべきものがなくなると、たちまちダメになるということだ。
この歴史観は、ヘレン・ミアーズの『アメリカの鏡・日本』(Mirror for Americans :JAPAN)という本によって確立した。日本の近現代史を描いた本のなかで、この本ほど的確な本はない。
1948年出版の本だが、あまりの的を射た指摘に、マッカーサーが発禁にしたといういわくつきの本である。
ヘレン・ミアーズは言っている。
日本は幕末・明治維新において、西欧を先生として、その忠実な生徒として近現代史に登場したと——。日本は西欧文明を取り入れ、帝国主義を実践することで、ついに列強と肩を並べるまでになった。ところが、日清戦争で高校、日露戦争で大学を卒業して一人前の大人として振る舞うようになると、欧米の先生から強烈な反発にあうようになった。
欧米は、国際法、人道主義、機会均等、自由貿易などを標榜するものの、それは建前(法的偽装)にすぎず、すべては「Logic of Events」(事実の論理)で動いているのだった。つまり、利害がすべてのパワーポリティクスである。
これにより、日本は第二次世界大戦に敗れた。
「失われた30年」は先生と教科書を見失った漂流
ヘレン・ミアーズの『アメリカの鏡・日本』は、第二次世界大戦で終わっているが、戦後も同じだ。日本は主としてアメリカのルールのなかで、アメリカを先生、テキストとして目覚ましい発展を遂げた。
しかし、アメリカを超えるまでになったとき、アメリカによる激しい「日本叩き」にあった。1985年のプラザ合意、日米半導体交渉、日米構造会議などは、すべてアメリカによる日本をターゲットしたパワーポリティクスである。
このように、日本の近現代史は、その節目、節目に世代交代の失敗が重なり、日本は繁栄から一気に衰退に向かった。これを別の視点で見ると、日本は欧米という先生と教科書がないと発展しない。そして、その先生、教科書の教えを超えると叩かれるのだ。
となると、現在も続く「失われた30年」は、先生と教科書を見失った漂流と言える。
教科書はあっても政治家の劣化がひどすぎる
いまの世界経済は、日本経済がピークに達した冷戦時と違っている。あらゆる点で開かれたグローバル経済であり、それを推進しているのはIT、これからは生成AIであろう。さらに、気候変動に対応したシステムと技術発展が要求される。
つまり、遅れをとった日本が学ぶべき先生、教科書は確実にある。なのに、この国は学ぶべきことを頑なに拒否している。というか、それに気がついていない。とくに、政治家の劣化はひどく、明治維新をつくった日本人とはまったく違う人種たちが権力を握っている。
1990年代までは、それでもなんとかなっただろう。しかし、2020年代のいま、ここまで政治家が劣化すると、日本に次の発展期は訪れない。
株価が最高値を更新した23日、岸田首相は記者団の質問に、「デフレ脱却に向けた官民の取り組みをより加速させたい」と答えた。
どこまでトンチンカンなのか。いったい、いまの日本のどこがデフレなのか。いくら実体経済と関係ないとはいえ、株価はいつか暴落するだろう。
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