この記事の初出は2024年7月16日
アメリカの外食産業も倒産、閉店ラッシュ
外食産業が危機に陥っているのは日本だけではない。世界的なインフレは外食産業を直撃し、とくにアメリカでは、多くのレスランチェーンが倒産、閉店に追い込まれている。
最近でいちばん話題になったのは、日本でも人気の「レッドロブスター」が破産法(チャプター11)を申請し、破産手続きに入って50店舗を閉鎖することになったことだろう。
レッドロブスター以外にも、アメリカのレストランチェーンは、続々と店舗閉鎖を発表している。以下、これまで発表されたものを列記する。
「ピザハット」は500店舗を閉鎖
「デニーズ」は年末までに20店舗を閉鎖
「アップルビーズ」は35店舗を閉鎖
「オールドカントリービュッフェ」は残りの店舗を全て閉店
「バッファロー・ワイルド・ウィングス」はカナダ全土の店舗と米国の60店舗を閉鎖
「マリー・カレンダーズ」は残りの店舗をすべて閉鎖
「アウトバックステーキハウス」は700店舗のうち41店舗を閉鎖
「マード・ピザ」は合計27店舗を閉鎖
「ルビーチューズデイ」はさらに16店舗を閉店
「ジョーズクラブシャック」は60店舗のうち41店舗を閉店
「ボーンフィッシュグリル」は7店舗を閉店
結局、どうしようとも人口減には勝てない
経済産業省公表の「飲食関連産業の動向」によると、2023年の外食産業の市場規模は28兆円である。1997年の29兆円が最大規模で、その後は長く続いたデフレで縮小を続けた。ただ、徐々に回復して、2011年には22兆円だったのが、2019年は26兆円にまで達した。
ところが、そこに襲ってきたのがコロナ禍で、2020年には18兆円まで市場は縮小してしまった。
それが、昨年、なんとか28兆円まで回復したのだから、他業界に比べたら、外食産業は健闘していると言えるかもしれない。
しかし、もうどう見ても限界である。ここまで、不振の原因をいくつも書いてきたが、もっともはっきりしている原因は、この国の人口がどんどん減っていることである。
つまり、消費者、食べる人が減っているのだから、どうしようもない。結局、どうしようとも人口減には勝てないということだ。
川口市、鹿児島市が消えてなくなるのと同じ
日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに減少に転じた。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると2048年に9913万人となって1億人を割り込んだ後、2060年には8674万人、2100年には4959万人となり、5000万人を下回ると予測されている。
人口減が始まったとき、毎年、約50万人が減るとされたが、減少幅は年を追うごとに増えてきた。総務省が今年の4月に発表した人口推計では、2023年は前年よりも59万5000人減っている。これは埼玉県川口市や鹿児島県鹿児島市がなくなったことと同じである。
人口減とともに、飲食業界だけではなく、あらゆる業界が縮小する。なかには完全になくなってしまう業界がないとも限らない。しかし、居酒屋やラーメン店はいつまでもあり続けるだろう。
江戸の単身赴任社会が生み出した居酒屋文化
飲食店は、飲食を超えた日本の食文化であり、日本社会の一形態である。よく「京都の着倒れ、大阪の食い倒れ、江戸の呑み倒れ」と言われるように、現在につながる居酒屋が誕生したのは、江戸時代中期だとされる。
酒屋の店頭で買ったお酒を飲むことが一般化し、次第に酒とともにつまみ、食事を出すようになった。江戸は、武家社会、商人社会で、参勤交代や商売などにより、全国各地から集まった単身赴任者が多かった。
たとえば、単身赴任の武士は、自分で食事をつくることなど、面倒でしない。また、独身で長屋暮らしの職人や商人も、長屋の台所で火を起こすなどしない。
こうして、仕事を終えた武士、職人、商人たちが一杯を楽しみ、夕飯も済ませられるという居酒屋ができあがったのだという。人が集まれば、文化が生まれる。
ついこの間、いやいまもなお、居酒屋は働く人々のオアシスである。ロボット店員、タブレット注文は味気ないが、それでも居酒屋は不滅である。

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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