2025年11月7日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

山田順の「週刊:未来地図」 誰が首相になろうと円安は進み国民生活は崩壊する。いまこそ国債発行に歯止めを!(完)

■勝ち組は富裕層、負け組は中間層、年金生活者

 高市トレードによって、これまで株価は上げに上げてきた。しかし、これは株価が上がっているのではなく、増えすぎたマネーが株価などの金融資産に向かい、通貨が下落しているのだ。
 通貨の下落の恩恵を受けるのは、金融資産に投資している人々、ほぼ富裕層だけである。富裕層は株が高騰し、不動産価格も高騰したため、旺盛な消費を続けている。
 だから、消費支出は8月の家計調査では、1世帯当たりの消費支出が物価変動の影響を除いた実質で前年同月比2.3%増加し、4カ月連続のプラスになった。
 しかし、一般層は、切り詰めた生活を強いられている。
 インフレの負け組は、中間層、年金生活者である。中間層のほとんどを占める給与所得者でまったく投資をしていない層は、完全な負け組だ。

■空売りヘッジファンドが狙う日本国債の暴落

 日本の財政悪化を絶好のチャンスとして、ヘッジファンドは日本国債の空売りを仕掛けている。過去に何度もこれを行ってきたが、これまではほとんど失敗してきた。
 しかし、今後はわからない。
 私が『資産フライト』(文春新書)を書いた15年ほど前、取材したヘッジファンドは、いまもしつこく日本国債の空売りを仕掛けようとしている。いわゆる「ウィドウメーカートレード」である。
 日本国債空売りヘッジファンドの筆頭は、ヘイマン・キャピタル・マネジメントである。運営者のカイル・バス氏は、「日本は財政破綻に向かっている。このままでは、いずれ日本国債は暴落する」という主張を繰り返し述べている。

■日銀の利上げと国債発行の減額・停止は必至

 量的金融緩和のような異次元の政策でもたらされたインフレ景気は、いずれ崩壊する。この崩壊を防ぐ手立ては、日本にはほぼ残されていない。
 日銀は禁じ手のETF買いをやめ、ようやく売却に転じたが、完全売却にはなんと100年かかる計算だ。市場が100年も待ってくれるわけがない。
 現在、中央銀行の緩和で溢れた貨幣の価値の下落局面に入っている。問題は、その下落幅がどれだけ大きいかということだ。
 次の日銀の金融政策決定会合は10月29・30日である。トランプ大統領の来日(予定では27・28日)の直後である。ここで、日銀は少しでも利上げをするべきだろう。そして、政治家は、財源論になったとき「足りなければ国債発行で」などという愚かな発言をやめ、今後は、国債残高を少しでも減らし、国債発行に頼らない政策を打ち出すべきだ。
 そうしないと、円安の底が抜け、インフレはハイパーインフレとなって、国民生活を崩壊させる。

*今回は、「Yahoo!ニュース」への寄稿コラム記事をそのまま配信します。最後に一言添えれば、この政局の混乱は、どんなかたちで新政権ができようと続くということ。市場も政局混乱につられ、まったく方向感がないまま漂流するということでしょう。(了)

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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