■右傾化した若年層が高市内閣を支持している
10月26日発表の毎日新聞の世論調査によると、高市内閣の支持率は65%、不支持率は22%である。これまでの政権発足時の支持率を大きく上回っている。
高市内閣の高い支持率は、若者たちが大きく貢献している。10月23日公表の読売新聞の世論調査では、18~39歳の支持率はなんと80%にも達している。
若年層だけではない、40~59歳でも75%、60歳以上でも63%だから、日本人は本当に「保守的」「右寄り」になったと言える。
高市首相は、これまでのどんな首相よりも「保守的」「右寄り」である。米国メディアも、みなそう称している。
CBSは「ウルトラ保守」(ultraconservative)、CNNは「保守強硬派」(hardline conservative)、ワシントン・ポストは「タカ派」(hawk)と呼んだ。
しかし、行き過ぎた「保守化」「右傾化」は、結局、国と国民を貧しくする。保守政策、右寄り政策はバラマキを招き、カネがかかり過ぎるからだ。そのために、結局は増税しなければならなくなる。国債発行も、将来の増税である。
■なぜ、若者は「保守化」「右傾化」したのか?
高市内閣の18〜39歳の若年層の支持率が80%にまでにもなった理由として、真っ先に挙げられているが、若者の貧困化だ。
「失われた30年」の最大の犠牲者は、この層で、彼らはいくら働いても報われないという絶望感を抱いている。なにしろ、給料は世界的に安く、しかも上がらない。生活は苦しくなる一方で、将来の展望が開けない。
その結果の未婚化、少子化である。結婚もできなければ、子供もつくれない。そんななか、移民や外国人が増え、慣れ親しんだ日本社会が変質していく。
ここに、自民党右派や参政党などが、「あなたたちが不幸なのは外国人や外国のせい。グローバル化、新自由主義が仕事を奪い、格差を拡大させた」というストリーを与えれば、右傾化するのは当然だろう。
しかし、右傾化して、グローバリズムを否定し、外国人を排除し、自分たちだけでやっていこうとすれば、もっと貧しくなる。サプライチェーンが世界中で繋がり、ネットとAIで情報も世界中で共有される世の中で、保守化、右傾化は最悪の選択である。
■アメリカとうまくやればやるほど日本は衰退する
保守化、右傾化がよくないといっても、だからリベラルがいいと言うつもりはない。アメリカではリベラルが行き過ぎて、「ポリコレ」「アファーマティブアクション」「DEI」(多様性・公平性・包括性)などによる逆差別が生まれ、その反動で、トランプのような怪物が出現してしまった。
その結果、いまのアメリカは、国内が分断され、世界覇権を失いつつある。トランプの馬鹿げた関税政策により、経済は失速しつつある。アメリカはもはやかつてのアメリカではない。
そんなアメリカ、トランプに媚びを売り、安部元首相のような“個人的関係”を築いて、うまくやっていこうなどというのは卑屈すぎる。トランプのアメリカとうまくやればやるほど、日本は衰退する。日米同盟を強化すればするほど、日本国民は貧しくなる。
ローマ帝国がそうだったように、帝国は衰退すれば衰退するほど属州に重税を課し、その富を取り上げようとするからだ。
この続きは11月21日(金)に掲載します。
本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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