最近、子どもたちから「AIに聞いてみたらすぐ分かるよ」と言われる場面が増えました。確かにAIは便利です。作文の下書き、英語の文法チェック、日本の時事情報の検索―。私たち親世代が調べて考えるのに時間がかかったことが、ほんの数秒で出てくるようになりました。けれど同時に、「このままでいいのだろうか」といった不安もどこかに残ります。特に日本の帰国生入試を目指しているご家庭では、「自分の言葉で考え、書き、話す」ことが強く求められることが多いため、「AIが考えてくれる世界」に対して慎重にならざるを得ません。
では、AIの時代に子どもたちは「考える力」をどのように育てていけばよいのでしょうか。そして、私たち保護者は、AIとどう向き合っていけばよいのでしょうか。
AIは「答え」をくれるけれど、「問い」はくれません
AIは優秀です。検索にも作文にもある程度の「正しい答え」を提示してくれます。しかし、AIが得意なのは「既に誰かが考えたこと」を整理して見せることです。つまり、AIの中にあるのは、過去の情報、誰かの意見、平均的な解釈です。
一方で、日本の帰国生入試で求められるのは、「あなた自身の考え」です。
・なぜそう思ったのか?
・その体験から何を学んだのか?
・これからどう行動したいのか?
こうした「問い」に答えるには、「自分の中から言葉を紡ぐ力」が必要になります。それは、AIにはまだできない、人間だけが持つ力です。
AIを「使いこなす」ことが学びになる
だからといって、AIを否定する必要はありません。むしろ、AIを「使いこなす力」こそが、これからの学びには欠かせないと感じています。たとえば、AIに作文の骨子を作ってもらい、その上で「自分ならどう言い換えるか」「どこに自分の経験を入れるか」を考えるのは、とても良い練習になります。また、AIが出してきた答えに対して「これは正しいのか?」「他の見方はあるか?」と問い直す力も、まさに今の入試が求めている力そのものです。つまり、AIはあくまで出発点であり、そこから自分の頭で考え直す力こそが、子どもたちの個性と未来を育んでいくのだと思います。
海外で育ったからこそ、AIでは代替できない「人間らしさ」がある
ニューヨークで育つ子どもたちは、日々の生活の中で多様な文化や言語に触れ、考え、感じています。英語と日本語を使い分けながら、相手の立場を想像したり、自分の思いを調整したり―そうした経験は、AIにはできない「人間らしさ」を育ててくれます。海外での生活は、受験勉強の面では遠回りに見えるかもしれません。けれど長い目で見れば、「どんな時代でも通用する力」―それこそが、今この環境でこそ育っているのではないでしょうか。
AIとどう付き合うかを考えることが、「学び」の第一歩に
子どもたちはこれから、AIと共に生きる時代を歩んでいきます。だからこそ、今から「AIの答えをどう読むか」「そこからどう考えるか」を練習することが、受験にも、将来にもつながっていきます。私たち
保護者もまた、AIを怖がるのではなく、「問いを深めるきっかけ」として捉える視点をもっていたいものです。
帰国生入試が求めているのは、「知識」よりも「姿勢」です。そして、それはAIにはできない、人間にしかできない力です。
早稲田アカデミー ニューヨーク校
https://www.waseda-ac.co.jp/abroad/school/newyork.html
早稲田アカデミーNY校 川村宏一(かわむら こういち)

早稲田アカデミーUSA取締役・NY校現地代表。2002年に早稲田アカデミーに入社後、校舎で7年間にわたり講師を務め、その後、高校受験部門で英語科目の責任者を担当。現在の早稲アカ英語科システムの礎を築いた後、国際部に異動し、英語専門校舎の統括責任者に就任。2023年3月から現職。早稲田アカデミーの教育理念である「本気でやる子を育てる」を、海外においても実践している。お問い合わせはこちらまで(メール:newyork@waseda-academy.com)
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