ニューヨーク市の学校運営は、87万5000人以上の生徒を教育するシステムを担うという、まさにヘラクレス級の難題である。公立学校の生徒数が20以上の州のそれぞれを上回るこの都市において、教育は最も政治的な争点の一つだ。市教育局(DOE)のトップに就任したカマー・H・サミュエルズ氏(48)は、学業成績が人種や所得によって著しく分断され、解決策を巡り家庭間で激しい意見の対立が続く中、この広大な教育システムを導く責務を負うことになる。ニューヨークタイムズは12日、新教育局長が明らかにした優先課題について伝えた。

サミュエルズ氏の教育ビジョンは「厳格さ」と「公平性」が柱だ。直近までマンハッタン西地区の学区長を務めた教育現場のベテランである同氏は保護者に向けて「幼児期から卒業まで、全ての子どもは安全で、学問的に厳格かつ統合された学校に通う権利がある」と表明。学校統合などの難題にも正面から向き合う姿勢を示した。
市では、貧困層と高所得層の生徒間の隔たり解消が重点課題となっている。市内32学区のうち9学区(サミュエルズ氏が率いた2学区を含む)が対象で、これらの学区では社会経済的多様性が平均を上回る一方、所得水準による分離が依然として残っている。
教育行政は多くの都市で不平等是正と高度な学習機会の両立に苦慮してきた。公平性を理由に授業の在り方を見直す動きは、保護者の反発を招くことも少なくない。サミュエルズ氏は、公立学校が「ニューヨーク市の豊かな多文化性」を反映すべきだと述べ、生徒のアイデンティティを尊重しつつ、学問的な挑戦を怠らない学校づくりを約束している。
マムダニ市長とは主要政策で足並みをそろえ、教員の採用・定着の改善、学級規模縮小への対応、約15万人のホームレス児童への支援強化、読み書き教育の充実などを掲げる。また就任初週には、校長らに対し、高学年向け数学教育の改善方針を見直す可能性にも言及したようだ。政策の全体像は、学年度後半に明らかになる見通しだ。
サミュエルズ氏はジャマイカ生まれで、10代でニューヨークに移住。市立大学システムの出身で、バルーク大学で会計学の学士号、レーマン大学で初等教育の修士号を取得した。プロバスケットボール協会(NBA)で財務マネージャーとして3年間勤務した後、教育者の多様性向上を目指す市のプログラムを経て教育行政の道へ。ブロンクスの小学校教員、同区の中学校校長を経て、ブルックリン第13学区、マンハッタン第3学区の学区長を歴任した。
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