2026年1月26日 NY de Volunteer COLUMN

『NYで見つけた、私にできること〜NY de Volunteer』(8)やさしい日本語×言語交流プログラム

ちょっとした「やってみよう」が、人と人をつなげ、地域を支えているニューヨーク。ボランティア活動でのリアルな声や、心動く瞬間をNY de Volunteer がお届けします。

私たちNY de Volunteer は、社会課題の解決に向けて自ら考え行動する「チェンジメーカー」を育てることを目的に、2003年からニューヨークで活動している非営利団体です。

NY de Volunteer は、コニーアイランドを訪れた一人の日本人女性が、あまりに汚いビーチにショックを受け、「何かできることを」と、自らの手でごみ拾いを始めたことから始まりました。連載では、活動現場での人と人との触れ合いから生まれる、さまざまなエピソードをお届けしていきます。

連載第8回では、現地の大学生との「ランゲージエクスチェンジ(言語交流)」プログラムについてご紹介します。

大人気プログラムに込めた「新しい願い」

New York de Volunteerが実施するプログラムの中でも、常に定員がすぐに埋まる名物企画があります。それが現地の大学生との「ランゲージエクスチェンジ(言語交流)」です。コロンビア大学やニューヨーク大学(NYU)などの名門校で日本語を学ぶ学生たちの会話パートナーになるこの活動は、異国にいながら母国語である日本語を通じてダイレクトに貢献できる喜びから、多くのボランティアから支持されてきました。

しかし、長年この活動を続ける中で、私たちはある想いを抱き始めていました。「ただ楽しく言葉を交わすだけで終わってしまうのは、もったいないのではないか?」「もっと深い気づきや、日本に帰った後も生活に根付くような価値を届けられないだろうか?」という願いです。

これまでNew York de Volunteerでは、学生とのつながりを「ランゲージエクスチェンジ(言語交流)」と呼んできました。コロナ禍の孤独な時期、それは互いの心を温める大切な「交流」の場でした。しかし今、私たちはその定義を一歩先へ進めようとしています。単なる交流を超えた「日本語学習支援ボランティア」としての、新しい挑戦です。

きっかけは、学生スタッフがつないだ「点と点」

そんな時、一本の新しい道が開けました。きっかけは、私たちの活動を支える学生スタッフが運んできた「縁」でした。昨年、学生スタッフが「現地の大学生と日本人留学生でボランティアを考える」というディスカッション企画を実施した際、声をかけたのがニューヨーク市立大学(CUNY)バルーク校の日本語クラスに通う学生たちでした。

そこから先生とのつながりができ、「ぜひ言語交流にプラスαの要素を加えたプログラムをやりましょう」とトントン拍子に話が進んだのです。その先生は、日本人ボランティアに対しても「ぜひ『やさしい日本語』を知り、多文化共生のツールとして活用してほしい」という強い願いを持っておられました。まさに、私たちの想いと大学側のニーズが合致した瞬間でした。

きっかけとなった学生交流プログラム。
セントラルパークで、ボランティア企画について話し合いました

「やさしい日本語」が紡ぐ、帰国後の未来

なぜ、私たちが「やさしい日本語」にこだわったのか。それには理由があります。ニューヨークに暮らす日本人の多くは、数年という限られた任期を終えると日本へ帰国します。私たち運営スタッフも同様です。「せっかくニューヨークでボランティアの精神に触れても、帰国後に継続できる場が日本では見つけにくい。日本に帰っても、何かアクションを起こせるきっかけがあればいいのに」……そんなぼやきが、スタッフ間でも漏れていました。

そんな私たちの想いに応えるように今回、バルーク大学の先生を通して知ったのが、「やさしい日本語」でした。これは阪神・淡路大震災を機に、外国人に情報を「早く・正しく・分かりやすく」伝えるために考案された工夫です。難しい語彙や複雑な言い回しを避け、相手の理解に合わせて歩み寄る話し方。これを学ぶことは、帰国後の日本で身近に暮らす外国人と接する際にも大きな武器になります。偶然にも既に帰国した元スタッフの中にこの分野を大学のゼミで研究していたメンバーがおり、彼女が「力になりたい」と資料提供を快諾してくれたことで、企画は一気に具体化していきました。

私たちが「やさしい日本語」を取り入れたのは、ボランティアが単なる「会話練習の相手」に留まらず、一歩踏み込んだ「寄り添いの伴走者」になれると考えたからです。ニューヨークで得た経験が、帰国後の日常にも息づいていく。そんな実態に即した支援の形を模索する中で、このプログラムは生まれました。

運営スタッフの挑戦:イベント企画は「仕事」と同じ

実は、今回のプログラムを企画した私自身、イベント運営は全くの未経験でした。日本で経験してきた仕事とは勝手が違いましたが、「ゴールを決めて準備する」という本質は同じ。 

最大の壁は「やさしい日本語をどう学んで当日実践してもらうか」でした。「ボランティアなのに勉強が必要だと、ハードルが高くなるのでは?」という懸念もありましたが、やさしい日本語について事前に知ってもらい、生徒との会話で実践するためには多少負担になるかもしれないけれど、事前学習を設定することにしました。

帰国した元スタッフが提供してくれた貴重な資料をもとに、30分以内でオンライン学習できる仕組みを整えました。 結果、ふたを開けてみれば募集枠を上回る応募がありました。学びの意欲を持つボランティアの皆さんの熱量に、私たちがいちばん驚かされました。

スタッフで事前学習資料について最終確認!

ドキドキの当日:社会課題まで深まった交流

「皆、楽しんでくれるだろうか」と心配しながら迎えた当日。先生の素晴らしい準備のおかげで、会話は予想をはるかに超えて盛り上がりました。 話題は、単なる趣味の話にとどまりません。

「日本の会社文化(残業など)をどう思う?」

「日本で結婚したくない人が増えているのはなぜ?」

「文化の違う外国人と日本人はうまく共生できる?」

 学生たちの真剣な問いに、ボランティア側も背筋が伸びます。事前に下調べをして臨んでくれた方もおり、「学生の熱心さに刺激を受けた」「自分自身が日本の社会課題を考え直すきっかけになった」といった声が次々と上がりました。

これまでの「異文化交流」という枠を飛び越え、学んだ「やさしい日本語」を実践しながら、共に日本の社会課題に向き合う。そんな密度の高い対話を通じて、ボランティアの皆さんからは「より深く、役に立てている実感があった」という確かな手応えをいただきました。

時代に合わせて活動の定義を見直し、より本質的な「支援」の形を目指していく—。それこそが、今のNew York de Volunteerが何よりも大切にしている姿勢です。

どのテーブルもそれぞれの話題で盛り上がっていました

ニューヨークで、自分にも「誰かの役に立てる」実感を

アメリカはボランティア文化が非常に盛んです。学生たちは進学やキャリアのために、社会人は当たり前の習慣として活動に取り組んでいます。一方、日本では「ボランティアは心の余裕がある人がするもの」というイメージがまだ強いかもしれません。

しかし、ニューヨークで言葉が通じず悔しい思いをした経験、文化の違いに戸惑った経験を持つ私たちだからこそ、日本語を学ぶ学生たちの痛みが分かり、最高の「Tips(ヒント)」を伝えられるはずです。母語を使い、自分にできる形で誰かの助けになる。それは、自分自身の価値を再発見し、「自己肯定感」を育む貴重な体験になります。

「私にもできるかも」の一歩を

2026年が始まりました。何か新しいことを始めてみたい、今の生活に少しだけ違う景色を加えたい。もしそう思っているなら、ぜひ私たちのプログラムを覗いてみてください。 今回、参加者からは「自分の学びになった」「日本を客観的に見る良い機会だった」という声が多く寄せられました。「特別なスキル」はいりません。必要なのは、相手に寄り添おうとする「やさしい」気持ちだけです。

プログラムの最後に集合写真を撮影。「また来てください」学生からうれしい言葉をもらいました

新しい世界や、まだ知らない自分に気づける瞬間が、ここにはあります。皆様のご参加を、スタッフ一同心からお待ちしています!

                           文/Miki(NY de Volunteer運営スタッフ)

NY de Volunteerでは一緒に活躍してくれる仲間を募集しています。新たな一歩を一緒に踏み出してみませんか?興味のある人はこちらからご連絡ください。

運営スタッフ募集

NY de Volunteer

市民の社会参加やボランティア活動を推進し、グローバルリーダーの育成を通じて、社会課題の解決に向けて自発的に考え、行動する「チェンジメーカー」を社会に送り出すことを目的に、2003年から活動する非営利法人。公式SNSでは、ニューヨークでのボランティア活動の魅力や、イベント情報を配信中。フォロー&いいね!をお待ちしています。

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