ニューヨークのジャパン・ソサエティーは5月8日(金)から16日(木)まで、特集上映「長谷川和彦の反体制的な精神」を開催する。今年1月26日に80歳で亡くなった長谷川和彦(1946-2026)は、その生涯でたった2本の作品しか残さなかったが、いずれも記念碑的かつ過激な作品として、公開から半世紀近く経った今も多くの映画ファンから愛されている。

「青春の殺人者」(1976)、「太陽を盗んだ男」(1979)の監督として後年の日本映画界に広く影響を与えた長谷川は、1980年代の先駆的なインディペンデント制作団体ディレクターズカンパニーを創設、若手監督たちのリーダーでもあった。同団体は、石井聰亙、井筒和幸、大森一樹、黒沢清、相米慎二、 高橋伴明、根岸吉太郎といった、のちの日本映画界を背負って立つ人材を輩出した。
胎内被曝者として権力に抵抗
広島県出身。巨匠・今村昌平の指導の下で業界に入り、日活ロマンポルノ時代には助監督や脚本家を務めた後、公開年度の映画賞を総ナメにした2本の作品を制作。被曝2世という出自から権威に対する激しい不信感を持ち、作品にもそれが強く反映されていた。日本映画界における最大の悲劇の一つは、熱狂的な支持を集めた作品を完成させながら、その後二度と映画を撮ることがなかったことだろう。長年にわたり温められてきた未完の叙事詩「ユナイテッド・レッド・アーミー(連合赤軍)」は、黒沢清や大島渚の脚本家・田村勉の関与が噂され、数十年もの間、話題となっていた(若松孝二監督が「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」として制作、2008年公開)。
ジュリーと菅原文太の競演は伝説に
8日の開幕作は、35mmフィルムによる異色の作品「太陽を盗んだ男」。 沢田研二(ジュリー)演じる無気力な理科教師が原子力発電所からプルトニウムを盗み出し原爆を自作、野球中継の延長やローリングストーンズの来日公演を実現しないと原爆を爆発させると国家を脅迫し、菅原文太演じる刑事と死闘を繰り広げるといった内容で、自らの生い立ちを交錯させた日本映画史の分水嶺的作品。シリーズのハイライトは、親殺しをニヒリスティックに描いた、1976年の長編監督デビュー作「青春の殺人者」(水谷豊、原田美枝子主演/16mm)。また、デビュー前に長谷川が脚本を手がけた、名匠・神代辰巳監督による3作品「濡れた荒野を走れ」(1973)、「宵待草」(1974)、「青春の蹉跌」(1974)も上映する。
上映スケジュール
5月8日(金)19:00 「太陽を盗んだ男」
5月9日(土)15:00「濡れた荒野を走れ」、17:00「宵待草」、19:30「青春の殺人者」
5月15日(金)19:00「太陽を盗んだ男」
5月16日(土)17:00「青春の殺人者」、20:00「青春の蹉跌」
場所
Japan Society(333 E. 47th St.)
入場料
$16(一般)、$14(学生・シニア)、$12(会員)、$70(シリーズパス、会員は$50)
公式Webサイト
https://japansociety.org/film/
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