石川真生(上):ビエンナーレ展、およびアリソン・ブラッドリー・プロジェクツ・ギャラリー(526 West 26th Street)での個展『Rogue』 6月6日まで
第82回ホイットニー・ビエンナーレは、特にテーマの対象を絞ることなく、この世に存在するあらゆるもの、あらゆる現象の「関係性(Relationality)」を問いかける展示となっている。マルセラ・ゲレロ(1980年生)とドリュー・ソーヤー(1983年生)の2人のキュレーターたちは彼らがドリーム・リストと呼ぶ候補者500組の中から56組のアーティスト、デュオ、コレクティブを選出した。参加アーティストの3分の2以上、そしてキューレーターたちも、1980年以降の生まれ(45歳以下)である。

選出されたアーティストたちは合衆国50州に留まらず、世界各地に散らばるアメリカの占領地や併合地、軍事基地、海外領土(歴史家のダニエル・イマヴァールが著書『帝国の隠し方 How to Hide an Empire』で大アメリカ合衆国(The Greater America)と定義した領域)にルーツを持つ。これらのルーツとアメリカとの「関係性」は、単に地理的要素だけでなく、その過去・現在が生活や社会基盤にいかに影響を与えているかを示すものである。今回の展示の中で、私は時に、沖縄、フィリピン、ハワイの太平洋岸に位置する3つの群島をテーマにした作品に強く関心を持った。これらの群島は、移住、植民地化、そして欧米の支配の過程で地政学的な駒となってきた。芸術には、私たちが「仕方がない」「どうにもならない」「気にしても無駄だ」として脇に置いてしまった問題を思い出させ、時には衝撃を与える力がある。本稿で取り上げる作品はいずれも、土地の収奪や群島における植民地支配、米軍駐留がもたらす社会経済的影響といった様々な課題を私たちに考えさせてくれる。 作品を語る上で、その歴史とのつながりが非常に重要なので、少し長くなるかもしれないが、作品の背景となる歴史と合わせて紹介させていただいた。
日本からはアメリカ軍の駐留が続く沖縄出身の写真家であり活動家でもある石川真生が選出されている。私は2007年にチェルシーのアートフェアで石川真生の写真作品が展示された際に彼女とギャラリストの通訳を3日間務めたことがある。当時石川と話したとき、彼女は450年にわたり繁栄した琉球王国の誇るべき歴史を強調していた。
琉球王国は1429年、沖縄本島の3つの対立していた王国が統一されて成立した。その後1世紀にわたり、北方および南方の島々へと勢力を拡大し、那覇は国際貿易の重要な拠点となった。1609年、薩摩藩主の島津家久が約3,000の兵を率いて琉球王国に軍事侵攻し、わずか10日余りで首里城を陥落させ、薩摩・徳川幕府の支配下に置いた。一方で琉球王国は、明朝、続いて清朝への朝貢関係を維持しつつ、薩摩藩へ年貢を納めるという二重従属の立場を取ることで半独立状態を保った。17〜19世紀にかけて、文化、音楽、舞台芸術、工芸が発展し、これが沖縄独自の文化の基盤となった。日本が約250年間鎖国していた間にも、沖縄は文化交流と貿易において開かれていた。

© Mao Ishikawa. 石川真生およびアリソン・ブラッドリー・プロジェクツ画廊より提供
1879年、徳川幕府の崩壊後、沖縄は正式に日本の県となった。明治政府の政策は大きな影響を与え、沖縄の半独立性は失われ、文化的アイデンティティも大きく損なわれた。経済は砂糖生産への依存が大きく、困難に直面した。第二次世界大戦中、沖縄は戦禍に見舞われた。沖縄戦は太平洋戦線で最も激しい戦闘であり、人口の4分の1が命を落とした。1945年4月、日本の降伏前にアメリカは土地を接収し、日本の飛行場を米軍基地へと転用して侵攻を支援した。基地は1945〜52年の米軍統治下で拡張され、1952年のサンフランシスコ講和条約のもとで米国の排他的行政管理下に置かれ、恒久的な存在となった。1972年に沖縄は日本に返還されたが、合意により基地は引き続き米国の管理下に置かれている。沖縄には日本国内の米軍基地の62%が集中している。沖縄諸島は戦略的に重要な位置にあり、160の島々から成り、そのうち47〜49島に人が居住している。地理的には約1000km(620マイル)にわたり広がり、東シナ海とフィリピン海を分ける位置にある。(参考:britannica.com)

© Mao Ishikawa. 石川真生およびアリソン・ブラッドリー・プロジェクツ画廊より提供
石川真生は1953年、沖縄の日本復帰の翌年に生まれた。那覇市の高校に通い、新左翼による復帰反対運動に参加した。彼らはこの合意を解放ではなく、米日帝国主義を固定化し、沖縄の自己決定権を裏切る植民地的な移管と捉えていたからである。1972年に家族との不和をきっかけに上京し、学生運動グループに加わった。
この続きは5月8日(金)発行の本紙(メルマガ・ウェブサイト)に掲載します。
文/中里 スミ(なかざと・すみ)
アクセサリー・アーティスト。アメリカ生活50年、マンハッタン在住歴38年。東京生まれ、ウェストチェスター育ち。カーネギ・メロン大学美術部入学、英文学部卒業、ピッツバーグ大学大学院東洋学部。 業界を問わず同時通訳と翻訳。現代美術に強い関心をもつ。2012年ビーズ・アクセサリー・スタジオ、TOPPI(突飛)NYCを創立。人類とビーズの歴史は絵画よりも遥かに長い。素材、技術、文化、貿易等によって変化して来たビーズの表現の可能性に注目。ビーズ・アクセサリーの作品を独自の文法と語彙をもつ視覚的言語と思い制作している。
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