(この記事の初出は2024年2月13日)
アメリカ覇権が後退し温暖化が進む未来の憂鬱
さて、最後に述べたいのは、私の年ではもうあと20年は生きられないのだから、世界などどうなっても構わない。アメリカ大統領がトランプになろうとバイデンになろうと、プーチン、習近平がこの先も権力を持ち続け、世界がいま以上に混迷を深めようと知ったことではない。
そう、ときどきは思う。
しかし、私の子供、孫たちは、その世界で生きていかねばならない。日本の衰退はもう止めようがないが、世界がこれでは、彼らはいったいどこでどのように生きたらいいのか。さらに、心配なのは地球温暖化が進み、今後気候変動が激化することである。
先日のCNNの報道では、グリーンランドで氷が失われた面積は、過去30年間でNYシティのほぼ36倍に上ることが研究報告で明らかになったという。
すでに極地の氷はどこでも溶け出している。このままいけば、北極の氷は2050年までにはおおかた溶けてしまい、北極海は世界の主要航路となって、ロシア、カナダ、アメリカ、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、アイスランドなどの地政学上の力は増すだろう。
北極海を世界の船舶が行き交い、ロシアとカナダが世界最大の穀倉地帯となったとき、はたして世界覇権はどうなっているのだろうか?
アメリカの属国であることが最善の道
日本としては、アメリカの世界覇権が続き、そのなかでアメリカの「属国」として、ぬくぬくとやっていくのがもっとも幸せな道だ。このことを私はすでに拙著『永久属国論』(さくら舎 2017)で書いた。
しかし、日本の左翼、リベラルは「反米」であり、保守も右翼も日本独立を標榜して、アメリカ覇権から脱出しようとしている。信じがたい現実無視だ。
もし日本が本当に独立国になる道を選び、ロシア、中国と安全保障で対立したら、その出費、負担は莫大なものになる。いまの日本経済にそれに耐えられる力はない。日本は、ますます貧しくなるだけである。
いま私が願っていることは、アメリカ大統領にトランプ、バイデン以外の新星がなってアメリカ覇権を強化し、プーチンと習近平が早死にすることである。しかし、そんなことは起こりそうもない。憂鬱極まりない。
(つづく)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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