川野作織さん(71)が横浜からニューヨークにやって来たのは1978年。その頃、日本食といえばインスタントラーメンと「オニオンボルケーノ」ぐらいだった。今日では、手打ちそばからすしの「おまかせ」まで日本食はブームになっている。その隠れた立役者こそ川野さんだ。ニューヨーク・タイムズが2月27日、紹介した。

川野さんは料理道具や食器を輸入・販売する「KORIN(光琳)」を1982年に創業。松久信幸やダニエル・ブールー、ジャン・ジョルジュ・ヴォンゲリヒテン、エリック・リペールなどのカリスマシェフやフォーシーズンズといった高級ホテルが頼りにする専門店として知られる。トライベッカのショールームには20ドルのキッチンバサミから2000ドルのすし職人用和包丁までが並ぶ。店内は狭いが、アメリカの日本食ブームの歴史がぎっしり詰まっている。
「日本にいる時から、専業主婦に収まらないと分かっていた」と川野さん。保険業界で活躍していた母親の影響があったという。ジュリアード音楽院で学ぶことになった夫について来た。3年は保つと思った資金が6カ月で底をつくと、旧パンナムビルの近くの日本料理店で働き出したのがこの世界に入るきっかけだ。
今では、顧客数8000社。従業員も34人だ。2004年に創立した非営利団体「五絆(ごはん)財団」を通じ、日米の架け橋にもなる。日本の伝統工芸品の製作現場や蔵元を訪れたアメリカ人シェフは数百人に上る。川野さんは「日本食が私の人生の中心になるなんて思ってもみなかった」と振り返る。
もちろん、道は必ずしも平坦ではなかった。離婚して、幼い娘を連れて商談に臨んだこともある。1990年代には行き詰まり、帰国しようと思ったことも。そんなとき、ブルーミングデールズに納品できた日のことを思い出す。「『できることを全てやったのか』って自問自答するんです。『ノー』と言われたって、挫けることはないって分かっているんですから」。
編集部のつぶやき
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