2025年8月14日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

山田順の「週刊:未来地図」 参議院選の各党の政策は目先だけの一時しのぎ。これではインフレは止まらず、日本はとことん衰退する! (下)

現金給付と消費減税、どちらが効果があるか?

 はっきり言って現金給付も消費減税も、税金の使い方をどうするか、そしてそれをどう配分するかという問題である。よって、その効果が本当にあるのかどうかを考えなければならない。
 まず、現金給付だが、これは1回きりなので、その場しのぎの効果しかない。与党は消費減税より、すぐに国民の手元に届くことを強調しているが、そうだとしても、消費に回らず貯蓄に回ってしまえば、景気の底上げにはつながらない。
 では、消費減税はどうか?
 こちらは、現金給付よりは、実際に消費で支払う額が減るために短期的とはいえ物価対策になり、景気浮揚効果が望めると、多くのエコノミストが言う。
 しかし、実施するためには税制改正(国会における立法措置)が必要なため、時間がかかる。さらに、財源の手当をしないと、社会保障費に大きな影響が出る。

おカネが増えただけで消費が活発化するのか?

 さて、ここで単純な疑問がある。私は多くのエコノミストや政治家が言う「消費減税により消費が活発化し、景気がよくなる」と言うことを疑っている。というのは、いまの日本の消費が、ほぼ生活に必要なモノとサービスの「必要消費」(衣食住)が中心だからだ。
 人々は、日々必要なものを買っているだけである。すっかり“貧乏国”になったこの国では、必要消費以外のいわゆる「贅沢消費」(旅行、外食、趣味など)は、それほど多くない。したがって、消費税を下げても消費は増えないのではないかと思う。
 消費が増えるには、不可分所得の増加はもちろんだが、「これはどうしても買わなければならない」と思わせる利便性に富んだモノとサービス、魅力的かつ画期的な新製品と新サービスが増えなければならないと思う。いまの日本にそれがあるだろうか? 単に使えるおカネが多少増えたからといって、モノやサービスをこれまでより多く買うだろうか?

円安による輸入物価上昇がインフレの原因か?

 さらに、私が疑問というか、情けないと思うのは、給付金も消費減税も目先の物価対策、バラマキのためか、財源に対しての真面目な議論がないことだ。各党とも、思いつきのように、大企業や富裕層に対する課税の強化、赤字国債の増発などを挙げているが、これは消費減税をするためにほかの税を上げるということ。つまり、税を取るところを代えただけに過ぎない。
 しかも、なぜいま、日本の物価上昇率が欧米先進国以上で、経済がスタグフレーション(景気低迷下のインフレ進行)に陥っているのかの分析がない。多くの政治家は、円安で輸入物価が上がったためと思い込んでいるが、それは一昨年ぐらいまでの話だ。
 歴史的円安が始まったのは、2022年3月。それ以降どんどん円安が進み、2023年10月にはついに150円を突破した。そして、このレベルの円安はすでに定着して2年は経過している。
 したがって、現在の3%を超える物価上昇は、円安だけでは説明がつかない。

この続きは8月15日(金)発行の本紙(ウェブサイト)に掲載します。 
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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