2004年3月に放送を開始したMTVの人気番組「Pimp My Ride」。視聴者から応募されたボロ車をカスタマイズして見違えるようなクールな車に仕上げるという内容で、これまで多くの〝名車〟を生み出してきた。実際に走っているのが信じられないくらいガタのきたダサい車をMCでラッパーのエグジビット(2006年のリニューアル後はファット・ジョーに交代)が酷評するところや、番組スポンサーから提供されるモニターやゲーム機といった豪華な機器を装備するのが特徴だが、すべての改造がクールでよろこばれてきた訳ではなさそうだ。

シーズン6で車を改造してもらったセス・マルティノさんは「あんな改造をするならば、前もって言ってくれれば質問できたのに」とハフィントン・ポストの取材で語っている。点けっぱなしにすると熱すぎて運転できなくなるLEDライトやまったく映らないテレビ、さらにトランクで場所をとっている綿アメ機(なぜ?)…。せっかくの改造も素直によろこべないのは納得。撮影のためだけに装備されるオプションもあるようで、同シーズンに出演したジャスティン・デアリンジャーさんの車の場合、シャンパン立てとドライブインシアターは「飲酒と運転の関係」、また「路上での安全性」をそれぞれ考慮して収録後に取り外されたという。エグゼクティブプロデューサーの一人、ラリー・ホッチマン氏によると「テレビ映りは良くても十分な安全が保障されていなければ、日常の運転に適したものに取り替える」そうだ。

他にも、必要な部品は付けず必要のない見た目がかっこいい部品を付ける、装備が多すぎて車体が重くスピードが出ない、改装にかかる時間は数週間と見せかけて実際は半年以上かかることもある(その間依頼主は自腹でレンタカーを借りなければならない)、車をより汚く見せるためにわざと吸い殻などを置く、極めつけは改造した車が数年後に爆発・炎上したという例も(爆発の原因が改造と直接関係あるかは明らかになっていないが…)。また素人である依頼主に対しても、改造後のリアクションが小さければ「もっと感情を出して、飛び回って叫べ」などとテイク2、3、4…を撮らされるという。

テレビの〝やらせ〟に今さら驚く人も少ないが、1つの番組でこれだけ出てくれば、これまでと同じ目線で番組を見ることができなくなりそうだ。
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