オーストラリア・シドニーでのハヌカ銃乱射事件の衝撃の中、ニューヨーク各地のユダヤ教徒は14日、メノラ(七枝燭台)に灯をともした。ブルックリンのグランド・アーミー・プラザでは、厳寒の夜に数十人が集まり、ニューヨーク州選出のダニエル・ゴールドマン下院議員(民主)とシモン・ヘクト師が、産業用ハシゴ車が必要なほど高いメノラで2本目のろうそくに火を灯す様子を見守った。ニューヨークタイムズが15日、伝えた。

ニューヨークはイスラエル以外で世界最大のユダヤ人コミュニティーを抱える都市であり、ブルックリンはその中心地だ。ハンター・ディラード=ヤクボウィッツさん(24)は、近くのクラウンハイツで育ったにもかかわらず、グランド・アーミー・プラザでのメノラ点灯式にはこれまで一度も参加したことがなかったが、シドニーでの銃乱射事件をきっかけに、初めて公のハヌカ祝典に参加した。
「ここ数年は、ユダヤ人であることが怖い。しかし、ユダヤ人として存在感を示し続け、ここに居続け、可能な限り強靭であり続けることが重要だと感じる」と話す。クラウンハイツ在住のアレックス・ローゼンタールさん(34)は「ニューヨークはおそらく世界で最も安全な場所だろう」と前置きしつつ、「それでも不安は消えない」と述べた。「怖い。そして週末にシドニーで起きた事件で、人々はより大胆に憎悪を露わにするようになると思う」。ローゼンタールさんは、公の場でキッパ(ユダヤ教の頭巾)を着用することを恐れているとも打ち明けた。
イェシーバ大学の学生デイビッド・スミゲルさんは14日夜、同大学のマンハッタン校舎で開催されたメノラ点灯式に参加。式典はオーストラリアの犠牲者を追悼する集会を兼ねていた。スミゲルさんは、多くのアメリカ人と同様、SNSでボンディビーチでの襲撃の映像を見た。10月7日のハマスによるイスラエル攻撃以降、「もはやユダヤ人であるだけで、どこにいても安全を感じられない」と実感したという。
2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃と、その後ガザ地区でイスラエルが展開した戦争(同地域を壊滅させ、約7万人が死亡)は世界中で抗議活動を引き起こした。アメリカのイスラエルに対する支援に反対するアメリカ人の数も劇的に増加している。ニューヨーク市の市長選では、長年にわたりイスラエルを批判してきたゾーラン・マムダニ氏が当選。イスラエルに関する彼の見解は多くのユダヤ人を不安に陥れた。一方で、多くのユダヤ人は彼の見解に賛同すると表明しており、これはユダヤ系アメリカ人のイスラエルおよびアラブ・イスラエル紛争に対する世代間の感情的隔たりを反映している。
グランド・アーミー・プラザでの式典で、ディラード=ヤクボビッチさんは「パレスチナの人々と彼らが経験していることに無関心であることは、全くユダヤ教的ではない。なぜならトーラー(ユダヤ教の教え)は、見知らぬ者を気にかけるよう命じているからだ。しかし、いかなる理由であれ、世界中のユダヤ人を不当に扱う口実としてイスラエルが利用されることは決してあってはならない」と語った。
アメリカでは近年、反ユダヤ主義事件が増加しており、コロラド州ボルダーでの追悼集会への襲撃事件や、ワシントンD.C.でのイスラエル大使館職員への銃撃事件などが発生。ニューヨーク市警察(NYPD)は14日、ニューヨークでのハヌカ祝賀行事に対する具体的な脅威はないとしながらも、「地域社会が安全に集まれるよう、行事会場やシナゴーグには警官を総動員する」と発表した。
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