ミシュラン二つ星を獲得したレストランOdoと、東京の超人気ラーメンシェフによるラーメンポップアップが今、ニューヨークで話題となっている。1カ月限定でしか食べられないラーメン、そして「ラーメンの進化が見たいので、ここでラーメン作りはいったん離れる」と語る渡邊大介シェフが、“節目”としてニューヨークで作り上げるラーメンとは?

「ラーメン作りはいったん、離れる」
渡邊シェフのラーメンが食べられるのは、ミシュラン二つ星に輝く懐石レストランOdoが手掛けるTHE GALLERY by Odo。オーナーの大堂浩樹シェフが、「思い切り“食”を、トレンドや周りの声を気にせず表現できる場所」として構想したギャラリーだ。
ポップアップ初日は完売。イベントは6月13日まで続くが、SNSでの拡散、そして海外にまで広がる渡邊シェフのファンによって、予約がなかなか取れないほどの盛り上がりを見せている。だが渡邊シェフは、今回のポップアップを機に、「ラーメン作りをしばらくの間離れる」と決意しているという。

日本一との呼び声も高い飯田商店で修行した後、飯田氏から正式に独立を認められた初の弟子として、東京・青梅市にRamen FeeLを開業。独創的な素材の掛け合わせと美しいビジュアルで、一躍人気店へと上り詰めた同店。TRYラーメン大賞新人賞部門で大賞を受賞し、食べログでも全国トップクラスの高評価を獲得。店は毎日オープン直後に完売するほどの人気ぶりだった。
そんな人気絶頂のタイミングで店を閉じ、ニューヨークへやって来た渡邊シェフ。 「ラーメンで、今までにないような境地を開きたい」。ラーメン界のパイオニアになり得る彼の熱い思いに迫った。
「アメリカはラーメンへの期待値が低い」
── もともとラーメン作りを始めたきっかけは?
高校を卒業してから、ドラムをやるためにテネシー州に住んでいて、アメリカでの生活はすごく楽しくて、性格的にも合っていたんです、でも「何か一つ足りないな?」と考えたときに、それがラーメンだったんです。
やっぱり海外にいればいるほど、自分のアイデンティティーに気付かされる感覚があって。「日本人として、この国でできる特別な技術を身に付けたい」と思い、ラーメン作りを始めることを決意しました。
── 母国の文化を客観視することで、「いいな」と思える瞬間ってありますよね。
最初はアメリカにあるラーメン店で、「運良く雇ってもらえたらラッキー」くらいに思っていたんです。でも、自分自身かなり職人気質なところがあって、どんどんのめり込んでしまって。
最終的には、「日本で一番有名なラーメン店の一つ」と言われる飯田商店で修行して、そこで初めて正式に独立を認められた弟子としてRamen FeeLをオープンしました。そこから5年ほど店を続けて、今に至ります。

── 今回、ニューヨークに来られたのは、新たなラーメンスタイルを築くため? Ramen FeeLは人気絶頂の中で閉店されましたよね。
これからもラーメンはもちろん突き詰めていくと思うんですけど、もう少し裾野の広いラーメンをやりたいなと思っていて。そのためには、いろんな調理技術を勉強しないといけない。これまでラーメンしか見てこなかったので、大堂さんのような日本料理だったり、フレンチ、イタリアンだったり、いろいろ学びたいなと。

江戸前寿司がどんどん洗練され、小さく繊細になっていったように、いずれはラーメンも、大きい丼ではなく小さな器に分けて、それぞれに(ペアリングの)ドリンクを提案できるような、液体量を減らした“点”を捉えるラーメンを作っていきたいと思っています。
特にニューヨークのラーメン店に行って感じたのは、みんな会話しながら楽しむじゃないですか。日本人は食事に対して“ガッと食べる”タイプだと思うんですけど、こっちの人はそうじゃない。
そういったカルチャーにも受け入れられる、より洗練されたラーメンを。大衆とは逆の発想をやるためには、一度ラーメンから離れないといけなかった。だから今回は、その修行に入る前に「ニューヨークでラーメンを作る」という夢が叶った、という感じですね。

── ニューヨークでラーメンを作る中で、日本との違いはありますか?
今回は、ここで働く仲間たちに、僕がいなくなっても作れるシステムを作らないといけないので、(誰かに教えるということは)日本でもやってこなかった初めての試みになります。
単に作り方を教えても意味はなくて、彼らの心をつかまないと聞いてくれない。そこは僕自身も勉強させてもらっています。
── 渡邊シェフが大事にされている、その“心”とは?
「人に対して作っている」ということを忘れないことですかね。ラーメンって、100〜200杯と大量に作れてしまうからこそ、お客さん一人一人にかける思いを大切にしないといけない。
アメリカは日本と違って、オープンキッチンでお客さんの顔が見える店が少ない。だからこそ、そこを意識しないといけなくて。でもやっぱり、「どんな人が食べるのか」はきちんと確認しないと、お客さんにも伝わってしまうんですよね。
アメリカで感じる課題は、日本ほどお客さんの期待値が高くないこと。「出せればいいや」と思えてしまう環境があるんです。でも、やっていくうちに「それで本当にいいのか?」と感じるようになった。やっぱり、日本でやっているような気持ちで誰かがラーメンを作らないと、この世界は変わらないと思います。

── ラーメンへの期待値の違い。海外の人が日本でラーメンを食べて、そのクオリティーに驚く理由でもありますよね。
アメリカの人たちは、大学生の頃にマルちゃんの袋麺を食べて育つんですよね。あれって1ドル以下じゃないですか。しかもラーメンって、構成としてそもそもおいしいし、誰でも作れてしまう。
だからこそ、「ラーメンの概念」を覆すためには、リアルなラーメンで圧倒的な差を見せないといけない。その思いで今回ニューヨークに来ました。そこは僕が先頭に立ってやっていけたらと思っています。
◇
“ラーメン激戦区”とも言われるニューヨーク。しかし一方で、「誰でも作れてしまう」というラーメンの特性ゆえに、クオリティーの差が見えにくい側面もある。
そんな中、渡邊シェフのように、日本で磨かれた「正解」や「進化」を持ち込む存在は、この街のラーメン業界にとって大きな刺激になるはずだ。
SNSでは既に実食した人たちから、「人生で一度は食べてほしい」「ラーメン好きなら、チャンスを逃さないで」「日本に行かないと食べられないと思っていた味」といった声も上がっており、早くも大きな反響を呼んでいる。
今回のポップアップでは、マルコメの味噌を使った味噌ラーメン(28ドル)をはじめ、渡邊シェフの代名詞とも言える塩ラーメン(29ドル)、そして大堂シェフ監修によるビーガン担々ラーメン(28ドル)の3種がスタンバイ。メニュー詳細や予約方法などは公式サイトで確認できる。
「僕のラーメンは今、世界中を探してもここでしか食べられません」そう笑顔で語りながら、渡邊シェフは今日も厨房に立つ。
取材・文・写真/ナガタミユ
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