寿司田

 ニューヨークの秋は短い。ハロウィーンが終わったと思ったら、サンクスギビングデー、クリスマス、ニューイヤーと怒濤のホリデーシーズンがやって来る。この街が、一年中で最も華やかに輝く季節だが、同時に日本や日本の味が恋しくなる季節でもある。昔ながらの味を守り、伝える「寿司田」の年末の特別企画について紹介する。

昨年大好評を博した「年越し寿司」 ことしも予約受付開始!

 ニューヨークのミッドタウンで25年、暖簾を上げてきた老舗「寿司田」。この店の魅力はなんと言っても、日本で寿司技術の基本を徹底的に叩き込まれてきた寿司職人たちによる、昔ながらの日本の味と伝統の技の神髄が味わえることに尽きる。
 寿司というのは、ただ単に生の魚を切り、すし飯の上に載せるだけではない。魚の血合いを抜き、うろこや骨を処理し、くさみを取り、最大限の旨さを引き出すためのさまざまな下ごしらえがなされている。そして、その気が遠くなるほどの手間と時間を全く感じさせないかのような凛とした静かな佇まいで、顧客の前に供される。

 この同店の本物の味と技を年末、家庭で味わうことができる。それが、「ニューヨークで暮らす日本人に、日本の年越しを楽しんでもらいたい」と昨年始められ、好評を博した持ち帰り用「年越し寿司」だ。ことしもまた、いよいよ予約受付が始まった。ことしはマディソン街本店および6番街店でも受け付けている。
 中トロ、うに、いくらをはじめとする豪華な9種類の握り、3種類の巻きもの、太巻きがズラリと並ぶ特上寿司が、110ドルだというのだから同店の心意気に驚いてしまう。同店代表取締役社長の藤田紀夫氏は、「日頃の皆様のご愛顧に対する感謝の気持ちです。地元の皆様への還元なので、利益は考えていません」と真摯に語る。
 家族や友人との思い出に残る年越しには、もってこいだ。

秋・冬ならではの味を食し うまい酒を飲む


 今なら、同店では秋の味覚の王様である松茸の土瓶蒸しなどの一品料理も楽しむことができ、身も心も温まる。
 また、通常はカリフォルニア州サンタバーバラの鮮やかな色合いとクリーミーな味わいが特徴のむらさきウニを提供しているが、この季節は大粒で濃厚なメイン州の馬糞ウニを味わうこともできる。殻を割り、その殻に盛りつけられた馬糞ウニの刺身は、潮の香りが匂い立つような新鮮さで、まさに絶品。2種類のウニを握り寿司で食べ比べてみるのは、いかがだろうか。

 同店は、寿司の味を引き立てる日本酒選びにも、余念がない。利き酒師の資格も持つ本店店長の木村浩司氏がこの秋・冬に選んだのは、福井の純米酒「伝心 稲」と「花垣」だ。
 「『伝心 稲』は香りがスッとしてキレ味もよく、冷やすとひときわ美味しい。また『花垣』は、常温やぬる燗で飲むのがおすすめの超辛口です」と教えてくれた。
 一品料理で旬を愛で、寿司をつまみながら、杯を傾ける。これから年末に向け、49丁目を東へ西へ行き来する回数が増えそうな予感がする。

問い合わせ
寿司田 www.sushiden.com

マディソン街 本店
19 E 49th St (bet 5th & Madison Ave) ☎212-758-2700
営業時間/ランチ 11:45am~2:15pm、ディナー 5:30pm~10pm 定休日/土曜・祝日

6番街店
123 W 49th St(bet 6th & 7th Ave) ☎212-398-2800
営業時間/ランチ 11:45am~2:30pm、ディナー 5:30pm~10pm 定休日/日曜・祝日