TAX SPECIALIST羽山 徹の税金をはじめとしたお金の話あれこれ Vol.7 会社員並びに個人の事業主が利用できる 「退職後用積立口座(Retirement Plan)」パート③

問7:Roth IRA、T―IRA両口座の運用益に関しては、両方とも同じルールが適用になっているのでしょうか?

解答:いいえ。Roth IRAの運用益には、T―IRAには無い特別のルールが設定されています。すなわち、本来は引き出された時点で課税の対象となるRoth IRA口座からの運用益(今まで全額税金未払い)が、次の二つの条件を同時に満たして引き出された場合には、非課税(税金を払う必要がない)となります。二つの条件とは、①引き出した本人(=口座の所有者)の年齢が59・5歳過ぎであること、②口座が開設されて5年以上経過していること、です。運用益を非課税扱いにするには、これら二つの条件を同時に満たす必要があります。

問8:ではもし、両条件を同時に満たさないでRoth IRA口座から運用益を引き出すと、どうなるのでしょうか?

解答:その場合の運用益は、所得税だけでなく「10%のペナルティ」を払うことになります(例:運用益が1万ドルの場合、その所得税+1000ドルのペナルティの支払い)。

問9:つまり、条件を満たさないでRoth IRA口座から引き出された運用益は、あくまで「繰延課税」の基本的ルールである、「引き出し時にその引き出し額全額が課税の対象となる」が適用され、引き出し時に60歳を超えている方でも、口座を開設して5年経っていなければ、ルール違反に科せられるペナルティが適用されてしまう、ということですか。

解答:まったくその通りです。くれぐれもルールを熟知した上で引き出しをしてください。

問10:では運用益の次に、口座への「積立額」について、両者を比較しながら説明して下さい。まずT―IRAから。

解答:T―IRA口座への積立にあたる給与額は、その年度の確定申告書(Form
1040)では、課税対象の給与から外され(差し引かれ)、所得税を払わない扱い(所得控除、あるいは「Before tax」と呼ばれる)となります。つまり、T―IRA口座への積立は、課税対象の給与額をその分だけ減額するので、結果的には節税をもたらしてくれます。またT―IRA口座には、いわゆる「所得制限」が設けられていません。従って、どんなに給与を含む総収入が多い人でも、毎年、最高額まで積立をしていくことが可能です。

問11:では次にRoth IRA口座への積立に関する特徴点について。

解答:一方、Roth IRA口座への積立に当たる給与額は、T―IRA口座へのそれと異なり、毎年「所得控除」とはなりません。すなわち、積み立てた年度に、既に所得税を支払った給与額による積立額として扱われ(「After tax」と呼ばれる)ます。従って、Roth IRA口座に積み立てることによる、節税効果は期待できません。一方、Roth IRAにはT―IRAと違い、「所得制限」が設けられています。従って、総収入が多い人はRoth IRA口座に積立が1ドルもできません。     次回に続く。


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羽山 徹
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