「戦争放棄」が意味するところとは?
日本国憲法の草案は、当時の日本政府が出してきた草案が単に明治憲法の焼き直しにすぎなかったため、マッカーサーがGHQ民政局に命じて、わずか9日間でつくらせた。この経緯は『日本国憲法を生んだ密室の九日間』(鈴木昭典、創元社、1995)に詳しく書かれているので、いまさら説明するまでもないと思う。詳しく知りたい方はどうか、この本を読んでほしい。
ただ、ここで特筆しておきたいのは、この本には、草案チームが下敷きにしたのが、アメリカ合衆国憲法であったことが書かれていることだ。そして、彼らがもっとも腐心したのが、「戦争放棄」に関する第9条の条文だったことである。なぜなら、歴史上、このような条文を持った憲法は、世界で存在したことがなかったからだ。
じつは、戦争放棄というのは、「国家主権」を放棄するのと同義である。戦争放棄は、昔流に言えば「刀狩り」であり、人々から武器を取り上げることだから、日本国民は独立革命すら起こせないことになる。
それでは、第9条の英文は、実際のところどうなっているのだろうか?
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Article 9. Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order, the Japanese people forever renounce war as a sovereign right of the nation and the threat or use of force as means of settling international disputes.
In order to accomplish the aim of the preceding paragraph, land, sea, and air forces, as well as other war potential, will never be maintained. The right of belligerency of the state will not be recognized.
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国除紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
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この条文で誰もが注目するのが、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」である。つまり、この条文があるかぎり、自衛隊は明確に「憲法違反」になる。
したがって、リベラルや共産党の主張は間違っていない。ただし、それは、憲法成立時にかぎってだけの話である。 (つづく)

【山田順 】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。
この続きは、11月10日発行の本紙(アプリとウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
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