日本の薬剤師・薬学博士で、現在はコロンビア大学博士研究員の樋口聖先生による「米国市販薬(OTC)講座」。胃腸薬や鎮痛剤など、毎回テーマを絞り、OTCの種類や、安全な選び方を教わる。先生自身、在米3年が経っても米国のOTCには驚かされることもしばしばだという。「一緒にファーマシーを紙面探訪して、賢い消費者になりましょう!」
第16回「ラベルから知る副作用」 正しく服用してこそ薬です
市販薬の箱には、正しい服用量とともに予想される副作用や飲み合わせについての注意、「Warning」が明記されています。箱に書かれた文字が小さくて読めない、単語が分からない、面倒などと言って、読まずに薬を飲んでしまうあなたは、要注意! 薬は飲み方次第で、毒にもなることを覚えておきましょう。
解熱鎮痛剤
アセトアミノフェンが成分の場合
アセトアミノフェンは安全性が高いとされ、解熱鎮痛薬として米国でも日本でもよく使用されますが、お酒との飲み合わせには注意が必要です。特にアセトアミノフェンは、アルコールが作用することで体に有害な物質に変化し、肝機能障害をもたらします。最悪の場合は死に至ることもあり、この作用を悪用した保険金目当ての殺人事件が10年ほど前に日本で起きています。風邪でアセトアミノフェンを飲んでいるのに飲み会などで、「ちょっとくらい大丈夫」と、誘惑に負けないようにしてください。アセトアミノフェンが成分の薬で代表的なものに「Tylenol」があります。

「Tylenol」
アセトアミノフェンが含まれているため、次のような場合は肝機能に深刻な損傷を与える可能性がある。
24時間以内に4000ミリグラム以上を摂取/アセトアミノフェンを含む他の薬と併用/この薬を服用中に毎日、3杯以上飲酒する
イブプロフェンが成分の場合
イブプロフェンはアセトアミノフェンと並び最もよく服用される解熱鎮痛薬ですが、ぜん息を起こしたり吹き出物が出たりすることがあるので注意が必要です。血液をサラサラにする薬や、血圧を下げたりむくみを緩和したりする利尿薬、精神疾患治療薬、抗生物質を服用している場合は、イブプロフェンや飲み合わせている薬の作用が変わったり、副作用の発現リスクが上がる可能性があります。広く使用されているからといって安心せずに、持病がある人は服用前に主治医に相談を。イブプロフェンが成分の薬で代表的なものに「Advil」があります。

「Advil」
イブプロフェンは、次のような深刻なアレルギー反応を引き起こす可能性がある。特にアスピリンにアレルギーをもつ人は要注意。
じんましん/顔のむくみ/ぜん息/ショック症状/
皮膚の赤み/発疹/水ぶくれ
風邪薬
デキストロメトルファンが成分の場合
デキストロメトルファン(薬の箱には「DM」と表記されています)は、脳に働きかけて咳を抑える薬として多くの風邪薬に含まれています。ただし、パーキンソン病の治療に用いられるMAOI(モノアミン酸化酵素)阻害薬と呼ばれる薬と併用した場合、中枢でのセロトニン濃度が高くなり高熱や痙攣などの副作用が出るので服用してはいけません。デキストロメトルファンが成分の薬で代表的なものに「Mucinex」があります。

「Mucinex」
MAOI(モノアミン酸化酵素)阻害薬あを服用中の人、または同薬の服用をやめてから2週間の人は服用する前に医師に相談を。
ジフェンヒドラミンが成分の場合
ジフェンヒドラミンは、抗ヒスタミン薬として鼻水、くしゃみ、かゆみなどに用いられるだけでなく、睡眠導入薬として広く使用されます。肺気腫や慢性気管支炎などの呼吸器系疾患、緑内障や前立腺肥大の人は、服用には注意が必要です。また、MAOI阻害薬や精神疾患系の薬との飲み合わせも要注意です。ジフェンヒドラミンが成分の薬で代表的なものに「Benadryl」があります。

「Benadryl」
ジフェンヒドラミンを含む他の薬を使用中の場合(皮膚科の薬も含む)は、服用しないこと。
胃薬
プロトンポンプインヒビターが成分の場合
プロトンポンプインヒビターは、胃酸の分泌を抑えてくれる薬です。効きめが強いため日本では医師の処方せんが必要です。胃酸を抑える他の薬「Zantac」や 「Pepcid」、血液をサラサラにする薬、抗不安、心疾患、免疫抑制、抗真菌、HIV、神経痛などの薬を飲んでいる人は注意が必要です。プロトンポンプインヒビターが成分の代表的な薬に「Prilosec」があります。

「Prilosec」
次のような症状がある場合は服用禁止。
食べ物を飲み込むのが困難または痛みを伴う。吐血または血便や黒っぽい便が出る/立ちくらみ、発汗やめまいを伴う胸やけ/息切れを伴う胸、肩の痛み/発汗/腕や首への放散痛/立ちくらみ/頻発する胸の痛み
樋口聖 Sei Higuchi, Ph.D.
博士(薬学)、薬剤師(日本の免許)。城西大学大学院・薬学研究科修士課程修了、福岡大学大学院・薬学研究科博士課程修了後、京都大学医学部博士研究員。2015年からコロンビア大学博士研究員として、糖尿病の研究に従事。
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