「多数代表制」と「高い選挙費用」が壁に
若者が投票に行かない、若い立候補者が少ない、そのため若い議員が少ないという原因は、日本の選挙制度にもある。まず、小選挙区による「多数代表制」が若い議員の誕生を阻んでいる。1人しか当選できないのだから、ベテラン、年長者が有利になる。
これは、「比例代表制」(各党の得票に応じて議席を配分する制度)の国では、若い議員の割合が多いことが証明している。オランダ、スウェーデン、フィンランドなどは比例代表制である。
また、若い立候補者が少ないのは、選挙にカネ(選挙費用)がかかりすぎることが大きい。衆議院選挙となると、1億円は必要と言われている。また、供託金が主要国と比べると高い。衆議院選挙においては、選挙区が300万円、比例代表は1人当たり600万円かかり、一定の得票数に達しなかった場合には没収され、国の懐に入る。ぼったくりである。
首相も大統領もほとんどの閣僚も女性の国
若きリーダー、女性リーダーと言っても、まだ世界ではそれほど多くない。それでも、リーダーが若い、リーダーが女性であることは、その国の未来を明るくする。希望をもたらす。
とくに、女性リーダーの国は、どこも政治的、経済的に安定している。したがって、投資家なら、そういう国に投資する。そこで、最後に、世界の女性リーダーをまとめて紹介してみたい。
最近の画期的なニュースといえば、12月21日にアイスランドで、アイスランド史上最年少の女性首相が誕生したことだ。中道左派・社会民主同盟党首のクリストルン・フロスタドッティル36歳で、育児中の母親だ。アイスランドは大統領も女性のハトラ・トーマスドッティル(55歳)で、これで国のトップ2人とも女性になった。しかも、内閣の閣僚11人中7人が女性である。
現地報道によると、新政権はインフレ抑制と金利の引き下げを主軸に、行政コストの削減、省庁再編・削減を実施し、2027年EU加盟を目指すという。じつに、まっとうな政策だ。アイスランドは、「ジェンダーギャップ指数」で14年連続首位である。
北欧諸国、バルト3国どこも女性首相が誕生
女性首相といえば、2019年に、世界最年少の34歳で第46代フィンランド首相となったサンナ・マリンが記憶に新しい。すでに退任しているが、ヨーロッパでは彼女と同じような女性のリーダーが続々と誕生してきた。
G7国イタリアの首相ジョルジャ・メローニは、ローマ出身の46歳。イタリア初の女性首相だ。29歳で下院議員に初当選し、31歳で当時のベルルスコーニ政権で若年対策担当相に起用され、イタリアで史上最年少での閣僚に就任している。
北欧諸国は女性の政治参加が進んでいる。フィンランド同様、ノルウェー、スウェーデンでも、これまで女性リーダーが誕生してきた。
現在デンマーク首相であるメッテ・フレデリクセン(47歳)は、デンマーク史上2人目の女性首相。2019年から首相を務めており、アフリカやイスラム圏からの移民に反対するなど、サッチャー型の強い女性と言える。トランプが「グリーンランドを買う」と言ったことには猛反発した。
現在、バルト3国のうち2カ国が女性首相である。ラトビアの首相のエビカ・シリニャ(49歳)。エストニアの首相のカーヤ・カラス(45歳)だ。リトアニアでも今年12月まで、女性政治家のイングリダ・シモニーテ(50歳)が首相を務めていた。
欧州以外で期待される女性リーダーたち
ヨーロッパから目を転じて、アジア、中米、アフリカと見ていくと、期待できる女性リーダーがいる国はけっこうある。
まずはアジアだが、なんと言っても今年8月にタイの首相となったペートンターン・シナワットだろう。彼女は、38歳と若い。元首相であるタクシン・シナワットの次女で、ロサンゼルス育ちである。「政治王朝化」「父の名だけで首相になった」との批判の声はあるが、出だしは順調だ。
続いては、今年の6月の大統領選挙に勝ち、10月に就任したメキシコ初の女性大統領クラウディア・シェインバウム(61歳)。就任式では「私は母であり、祖母であり、科学者であり、信心深い女性であり、きょうからは民意によりメキシコ大統領となった」と演説し喝采を浴びた。そして、いま麻薬カルテルの撲滅に乗り出し、トランプが課すととした関税25%を回避できると確信していると述べている。
日本ではほとんど知られていないが、アフリカのトーゴ、コンゴ民主共和国、ウガンダのトップは女性だ。トーゴ首相はヴィクトワール・トメガ・ドグベ(65歳)、コンゴ民主共和国首相はジュディス・トゥルカ(57歳)、ウガンダ首相はロビナ・ナッバンジャ(55歳)。いずれも、今後のアフリカを変えていく力を秘めている。
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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