ニューヨーク州およびニューヨーク市の所得税率は全米で最も高く、最高で約15%に達する。さらに、「富裕層増税」を公約に掲げるゾーハラン・マムダニ氏が次期市長に選出されたことで“ニューヨーク脱出”を検討する富裕層が増えている。ただ、これは口で言うほど容易ではない。富裕層が真にニューヨーク州の「非居住者」と認められるには、住所変更届や「年間183日を他州で過ごす」といった一般的な対策だけでは不十分で、生活の中心そのものを別州へ移す必要がある。こうした厳しい要件を満たすには相応の覚悟が求められ、実際に移住を実行に移すのはごく一部にとどまるという。ニューヨークタイムズが5日、伝えた。

州税務当局は約600人の監査官を擁し、全米でも屈指の厳格さで知られる。監査では「休暇を過ごした場所」「海外旅行後に滞在した場所」「家族の墓地」「ペットの遺灰の保管場所」など、プライベートに踏み込んだ質問が続く。さらに、「携帯電話の記録」「クレジットカードの明細」「E-ZPassの利用記録」「日誌」など、日常動向を示す膨大な資料の提出が求められることも珍しくない。
本気で税務上の非居住者扱い受けたいなら、運転免許証や選挙人登録の変更などの基本事項はもちろん、「ペットのマイクロチップ登録住所の変更」「埋葬計画の更新」「転居先で主治医や歯科医を探す」「加入クラブの会員資格切り替え」など、生活全般を別州へ移す徹底した対応が必要になる。
著名人を顧客に持つ税務弁護士によれば、数十年の実務経験から見ても、ニューヨーク脱出を検討する10人のうち、実行するのは1人程度だという。高所得者が新住所で監査や追加審査の対象になる可能性は極めて高く、転居を申告した年に100万ドル以上の収入があった元州民はほぼ確実に、1000万ドル以上であれば確率は“100%”とまで言われる。
2024年までの5年間で、州の監査官は所得税や売上税などを含む未納税額計138億ドルを回収しており、その厳格さは数字にも表れている。
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