アメリカの空港で身分証明書(ID)を提示せずに、素早く、保安検査へ進める仕組みが広がっている。TSA(米運輸保安局)が拡大する「Touchless ID(タッチレスID)」は、TSA PreCheck 利用者を対象に、顔認証で本人確認を行い、チェックポイントの手続きを簡素化するサービスだ。

顔認証で10秒以内に本人確認、手荷物検査もラクラク
Touchless ID は顔認証を用いて本人確認を行うことで、チェックポイントでIDを提示する手間を減らし、保安検査の迅速化を図るのが狙い。TSAの保安検査場に設置された専用レーンで利用できる。利用者は、順番が来たら係員がいるキオスク前へ進み、カメラを見るために、数秒静止するだけで本人確認が完了する。顔認証で問題がなければ、そのまま手荷物検査エリアへ進める。対象者は専用レーンで検査を受けられ、条件によっては靴やベルト、薄手の上着の着脱が不要となるケースもある。平均所要時間は10秒以内とされ、急いでいる旅行者にとって有益な選択肢になりそうだ。
15空港で導入、 JFK・LGA・EWRでも
Touchless ID は、TSAと参加する航空会社(アメリカン航空、アラスカ航空、デルタ航空、サウスウエスト航空、ユナイテッド航空)が連携して提供。現在、ジョン・F・ケネディ国際空港(JFK)、ラガーディア空港(LGA)、ニューアーク・リバティー国際空港(EWR)を含む、全米の主要空港を中心に15空港で利用できる。対象空港は下記。
アトランタ(ATL)、ワシントンD. C.(DCA)、デンバー(DEN)、ダラス・フォートワース(DFW)、デトロイト(DTW)、ニューアーク(EWR)、ジョン・F・ケネディ(JFK)、ラスベガス(LAS)、ロサンゼルス(LAX)、ラガーディア(LGA)、シカゴ(ORD)、ポートランド(PDX)、サンフランシスコ(SFO)、シアトル(SEA)、ソルトレイクシティ(SLC)
2026年春までに50空港追加、合計65空港へ
TSAは今春、Touchless ID を大規模に拡大する方針。大規模ハブ空港だけでなく地域空港も対象とし、新たに50空港に導入を広げ、夏までには65空港へ拡大する見通し。まずは下記の空港が優先的に追加される予定。
ヒューストン(IAH/HOU)、ワシントン・ダレス(IAD)、ボストン(BOS)、マイアミ(MIA)、フォートローダーデール(FLL)、オーランド(MCO)、ボルチモア(BWI)、カンザスシティ(MCI)、アンカレッジ(ANC)、サンノゼ(SJC)、サクラメント(SMF)、ロングビーチ(LGB)、カリフォルニア州オレンジカウンティ(SNA)、パームビーチ(PBI)、ダラス・ラブフィールド(DAL) など
誰が使える? 利用条件はTSA PreCheck+対象航空会社
Touchless ID 専用レーンを利用できるのは、TSA PreCheck の有資格者に限られる。つまり、一般の旅行者全てが対象ではなく、あくまで事前審査プログラムであるTSA PreCheck で承認された人が対象となるので、注意が必要。
日本国籍でも使える?
TSA PreCheck が申請できるのは、アメリカ市民および永住権保持者。ただし、米税関・国境取締局(CBP)が運営するTrusted Traveler Program(例:Global Entryなど)を通じてKTNが付与されるので、永住権を保持しない日本国籍の者もTSA PreCheck の対象となる(日本は、Global Entryの対象国)。
TSA PreCheckの加入方法(申し込み手順)
TSA PreCheck を利用するには、まず事前審査に申し込み、承認を受ける必要がある。基本的な流れは下記。
①オンラインで申請(事前登録)
②登録センター(Enrollment Center)で面談予約
③現地で本人確認(身分証明書の提示・指紋採取など)
④審査後、Known Traveler Number(KTN)が発行
⑤航空券予約や航空会社プロフィールにKTNを登録し、利用開始
Touchless IDを使うための条件(航空会社側の設定)
Touchless ID は、TSA PreCheck に加えて航空会社側の事前設定が必要となる。主な条件は下記。
● TSA PreCheckの資格(KTN)を保持している
●対象航空会社のマイレージプログラム(会員)に登録している
●航空会社プロフィールに有効なパスポート情報を登録している
●Touchless ID の利用にオプトイン(同意)している
●対象空港・対象便である
これらの条件を満たすと、モバイル搭乗券に「Touchless ID」表示が付与され、専用レーンを利用できる。
注意点:身分証明書の持参を推奨
Touchless IDは「提示不要」を目指す仕組みだが、システム障害や帰路・乗り継ぎ便では利用できない場合もある。そのため、TSAは万が一の場合に備えて、Real ID対応の身分証など物理的なIDの持参を推奨している。
顔認証は任意、使わないという選択もアリ
Touchless ID はの利用は任意(オプション)。利用しない場合は、通常のTSA PreCheck レーンへ進み、これまで通り身分証明書を係員に提示して通過できる。
プライバシーは? データは「24時間以内に削除」
TSAは、顔認証で取得した画像は「法執行・監視目的には使用せず、他機関と共有もしない」と説明している。また、利用者の写真や個人データは、予定された「フライト出発時刻から24時間以内に削除される」としている。
まとめ:出張・旅行が多い人は、要チェック
TSA PreCheck Touchless ID は、空港での本人確認を迅速化し、手続きをよりスムーズにする新サービスとして注目されている。対象空港や提携航空会社は、今後さらに拡大する見通しだが、利用にはTSA PreCheck(KTN)の有無に加え、航空会社プロフィールの更新やオプトイン設定が必要となる。JFK、LGA、EWRなどニューヨーク近郊の空港を利用する機会が多い人は、次回の旅行前に自分が対象かどうかを早めに確認しておこう。
文/Miki Takeda
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