米連邦最高裁は6月22日、1979年にニューヨーク市で行方不明となったイータン・パッツ君(当時6)を巡る事件で、ペドロ・ヘルナンデス受刑者の殺人有罪判決を復活させた。ウォール・ストリート・ジャーナルなどが同日、伝えた。

事件当時、ボデガで働いていたヘルナンデス受刑者は2012年、ニューヨーク市警察(NYPD)の聴取で、イータン君を店の地下に誘い込み殺害したと供述。17年に誘拐と重罪殺人で有罪、禁錮25年から終身刑を言い渡された。
しかし25年、連邦控訴裁は、供述に関する陪審への説明に問題があったとして有罪判決を破棄。再審か釈放が必要だと判断していた。争点は、ヘルナンデス受刑者が最初の供述をする前に、黙秘権などを告げるミランダ警告を受けていなかったことだった。その後、NYPDは権利を告げ、受刑者は改めて録画された供述を行った。
弁護側は、強引な取調べや精神疾患、低い知能指数の影響で虚偽の自白をしたと主張。陪審には、最初の供述が任意でないと判断した場合、その後の供述も慎重に扱うよう説明すべきだったと訴えていた。これに対し最高裁は、そうした説明を義務付ける明確な連邦法はないと判断。控訴裁は権限を超えたとして、判決を覆した。

別の有力容疑者は証拠なし
イータン君失踪の後、パッツ家が雇っていたベビーシッターの恋人で、小児性愛者のホセ・アントニオ・ラモスが長年、有力な容疑者とされてきたが、この事件に関連しては状況証拠のみで刑事訴追はされなかった。ラモスは児童への性的虐待事件で約20年間服役し、2012年に出所。その後は性犯罪者登録(Megan’s Law)違反で再び逮捕されるなどしたが、今年3月7日、ニューヨーク市のベルビュー病院で82歳で亡くなっていたことが、検察の裁判資料から明らかになっている(3月19日付ABC 7 New York)。
遺体はいまだに不明
イータン君は1979年5月25日、学校バスの停留所へ向かう途中で姿を消した。遺体は現在も見つかっていない。マンハッタン地区検事のアルビン・ブラッグ氏は、事件は「ニューヨーカーの世代を変えた」と述べ、判決を歓迎した。一方、弁護人は「無実の人間が収監されている」として失望を表明している。
行方不明児童対策を大きく変える
イータン君事件は、アメリカの「行方不明児童」対策を大きく変えた。顔写真をポスターや牛乳パックで広く共有する手法が広まり、レーガン大統領(当字)は1983年、失踪日の5月25日を「全米行方不明児童の日」に指定。後の全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)設立にもつながる流れを生み、子どもの誘拐・失踪を「家庭内の問題」ではなく、社会全体で捜す体制づくりの転機となった。こうした取り組みはその後、各国の行方不明児童対策にも影響を与え、日本でも初動捜査や迅速な情報共有を重視する現在の対応につながる国際的な流れの一つとなった。
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