日本を代表する前衛芸術家、草間彌生が8月14日、亡くなった。97歳だった。逝去が公式に発表された27日(日本時間)、ニューヨークタイムズやウォール・ストリート・ジャーナルなどの大手メディアも一斉に報道。ニューヨーク在住の日本人の間でも衝撃が広がった。

草間さんは永遠に生き続けると思った
「たくさんの素晴らしい作品を残してくれた。ご冥福を祈りたい」「草間さんは永遠に生き続けると思った。やりたいことをやり遂げたんだろう」「あっぱれあっぱれな生涯だった」「2012年にルイ・ヴィトンとのコラボレーションで、ショーウィンドウに等身大の草間彌生が並んでいて、お母さんが写真を撮っている横で子どもが『これ怖い』と怯えていたのが印象的」
LIRRコンコースの原色壁画
草間は絵画、版画、彫刻、インスタレーション、小説や詩など97年の生涯で膨大な数の作品を制作したが、日本と世界各地の屋外や公共スペースにパブリックアートを数多く残している。そのうちの一つが、グランド・セントラル・ターミナル地下に2023年開業したLIRR(ロングアイランド鉄道)の新駅、グランド・セントラル・マジソンのコンコースに埋め込まれたガラス製のモザイク壁画「A Message of Love, Directly from My Heart unto the Universe(わが心から宇宙へ、愛のメッセージ)」だ。22年に完成し、23年に設置された。

草間が2009年に始めた連作「わが永遠の魂」を発展させた作品で、鮮やかな原色を使い、水玉模様の人物、笑顔、目、太陽、生物のような形などが途切れることなく連なる。抽象画でありながら人の顔や生命体にも見え、見る人によって異なるモチーフを発見できるのが特徴だ。作品には、草間が長年表現してきた「愛」「宇宙」「平和」「人類への恩」というメッセージが込められており、通勤客が行き交う日常空間に喜びを届けたいという願いから制作された。草間からニューヨーカーへの「心からの贈り物」と位置付けられている。

心の傷が垣間見える
27日午前、コンコースは通行人でにぎわっていたが、足を止めて壁画を見たり写真を撮ったりする人は皆無。写真を撮る筆者に唯一、声をかけてくれた女性(匿名希望)は草間の訃報に触れて「(亡くなったことは)残念だが、生ききった。偉大なアーティストだった」と話した。「幼少期に身体的・心理的虐待を経験し、幻覚や強迫観念を作品に昇華させた。壁画はとてもカラフルで力強いが彼女の心の傷が垣間見える気がする」とも。

MTAアーツ・アンド・デザインのディレクター、ティナ・ヴァズ氏は声明文の中で「草間彌生氏は並外れた芸術的遺産を残してくれた。その作品がグランド・セントラル・マジソンを通じて、ニューヨーク市の風景の一部として残っていくことを光栄に思う。このプロジェクトに対する彼女のビジョンは、公共の通路を変容させ、駅を通るすべての人々に愛、意味、そしてつながりをもたらした。彼女の芸術的表現と精神は、これからの世代のニューヨーカーたちにも引き続き体験され続けるだろう」と語った。
モザイクの制作はニューヨークのミオット・モザイク・アート・スタジオ(Miotto Mosaic Art Studios)が担当し、MTAアーツ& デザインが公共芸術事業として設置した。グランド・セントラル・マジソンには、アメリカ人アーティスト、キキ・スミスによる自然を題材にしたモザイク作品も常設されている。
















