アメリカで暮らしていると、ときどき予想の斜め上をいく接客に出会います。日本のような丁寧さを期待しているわけではありません。それでも、「そこまで正直に言う?」「それで終わり?」と、思わず固まってしまうことがあります。もちろん、親切な店員さんもたくさんいます。今回は、そんな中で出会った、今でも忘れられない「少し自由すぎる店員さん」たちのお話です。

長く貼られたままの「故障中」の貼り紙。ここまでくると、もはや店内のインテリア

おすすめは「ありません」

ショッピングモールで、乗り物を疑似体験できるシミュレーターが並ぶ小さなお店を見つけました。朝早かったため、店内には私たちのほかに誰もいません。子どもたちがどれに乗るか迷っていたので、店員さんに「この中で、何かおすすめはありますか?」と尋ねると、一秒も迷わず首を横に振り、ひと言。

「No!」

しかも、面倒くさそうに答えたわけではありません。「本当に一つもない」と言わんばかりの、妙に確信に満ちた表情でした。ここまできっぱり言われると、「それなら、なぜこの店で働いているのだろう。もしかして、こういう乗り物が嫌いなのか。それとも、開店したばかりなのに、もう家に帰りたいのか」と、こちらの頭には余計な疑問ばかりが浮かびます。結局、私たちは顔を見合わせて笑い、どれにも乗らずに店を出ました。

私の勤務が終わるので、お会計を

レストランで注文した料理がテーブルに運ばれてきました。「さあ食べよう」と思ったその時、担当のサーバーが置いていったのは、料理だけではありません。チェックまで一緒です。まだ一口も食べていないのに、もう会計。いくらなんでも気が早すぎます。とりあえずチェックを脇に置いて食べ始めると、サーバーが再びやって来て言いました。

「もうすぐ私の勤務が終わるので、今、お会計をしてもらえますか?」

どうやら退勤前に、自分の担当分の精算を済ませ、チップも確定させたかったようです。私たちはまだ食事の途中でしたが、こちらのタイミングより、彼女のタイムカードの方が優先されたようです。

別のテーブルの客は、「まだ食べ終わっていないので、今は会計しません」ときっぱり断っていました。なるほど、その手があったか。私たちもそう言えばよかったのですが、サーバーの勢いに押され、料理を食べながら先に会計を済ませました。そして会計となれば、チップの金額も決めなければなりません。まだサービスの途中なのに、何を基準にすればいいのでしょう。退勤時間を正直に教えてくれたことへのチップですかね?

「知らない」で終了

アメリカの大手ホームセンター「ホーム・デポ(The Home Depot)」は、店舗がとにかく広いうえに商品の種類も多く、何がどこにあるのか分からないことがあります。そんな時に頼りになるのが店員さん。ほとんどの人は親切に対応してくれます。ところが、ある店員さんに探している商品の写真を見せ、「これを探しているのですが」と尋ねると、面倒そうに写真をちらりと見ただけで、こちらに目を向けることもなく、ひと言。

「自分には分からないから、ほかの人に聞いて」

その「ほかの人」が誰なのか、どこにいるのかを聞く間もなく、店員さんはさっさと立ち去ってしまいました。せっかく声をかけたのに、なんだかこちらが面倒をかけてしまったような気分になります。商品を探しに来たはずが、まずは「分かる店員さん」を探すことに。DIYの店だけあって、どうやら店内の案内まで「Do It Yourself」のようです。

商品の種類が多く、目当てのものを探すのもひと苦労なホーム・デポの店内

その場ではあきれて言葉を失っても、時間がたてば笑い話に変わります。こんな出来事も、アメリカ生活ならではの面白さなのかもしれません。

今日のひと言

「自由の国では、接客も自由」

どうやら自由は、サービスの形まで変えるようです。