
アメリカの警察官には、とにかく怖くて威圧的なイメージがあります。何も悪いことをしていないのに、パトカーが後ろを走っているだけで緊張してしまいます。先日も、制限速度を守って走っていたのに、パトカーを見つけた瞬間、思わず急ブレーキを踏んでしまいました。その音に気づいた警察官が、じろりとこちらを見ます。何もしていなかったはずなのに、これではかえって怪しい。今回は、そんなアメリカの警察官との、思いがけないエピソードについて書いてみようと思います。

DETOURの先はパトカーだらけ
ある日、あちこちで道路工事をしていて、通行止めばかり。カーナビの指示どおりに進んでもまた通行止めで、すっかり道に迷ってしまいました。仕方なく「DETOUR(迂回路)」の標識に従って走っていると、いつの間にか前方をパトカーが走っていました。ほかの車も走っていたし、後ろにも車が続いていたので、私は何の疑いもなくそのままパトカーの後についていきました。
ところが、ふと気がつくと、後ろには車が一台もいません。それどころか、見渡せば周りはパトカーだらけ。外で座っていた警察官たちまで立ち上がり、「あの車、何?」と言いたげな顔で、いっせいに警察官みんなが私を見ていました。
どうやら私は、入ってはいけないらしい場所に、堂々と迷い込んでしまったようです。とはいえ、あそこがいったい何の場所だったのか、今でもよくわかりません。
すると、反対側にいたパトカーが私に気づき、慌てたようにこちらへやって来て、目の前でぴたりと止まりました。
「ここで何してる?」
「わからない」
「なんでここに来た?」
「DETOURのとおりに来ただけ」
「ここは入っちゃいけないよ」
「知らなかった。前のパトカーについてきただけ」
「ついてきちゃダメだよ」
「……そうだよね」
「で、どこへ行きたい?」
「家」
警察官は「なんだ、この人は」と言いたげな顔で笑うと、わざわざパトカーを降り、私の車のそばまで来て、帰り道を詳しく教えてくれました。しかも、近くで見ると、今度は別の意味でびっくり。表情は思っていたよりずっと優しく、話し方も穏やかで、私の答えがよほどおかしかったのか、最後まで笑顔でした。
道には迷いましたが、思いがけず優しい対応をしてもらえたので、これはこれで結果オーライということにしました。
ガソリンまで入れてくれた警察官
そういえばずいぶん昔にはこんな経験もありました。アメリカで運転免許を取り、車を買って間もないころの話です。高速道路を走っていると、突然、車が止まってしまいました。どうやらガス欠です。当時はまだ携帯電話が今ほど普及しておらず、私も持っていませんでした。誰にも連絡できずに困っていると、5分もしないうちにパトカーが2台やって来ました。
2台は私の車を守るように前後に止まり、警察官の一人が声をかけてくれました。
「どうした? ここに止まっていると危ないよ」
「ガソリンがなくなったみたい」
「向こうにガソリンスタンドがあるから、送っていくよ」
初めて乗ったパトカーの中にはさまざまな機器が並び、まるで昔のドラマ『ナイトライダー』の車内のようでした。
ガソリンスタンドに着くと、警察官は携行缶まで買ってくれました。しかし、私はその使い方すらわかりません。
「これ、どうやって使うの?」
「知らないの?」
「知らない」
「……じゃあ、やるよ」
結局、携行缶への給油から、車にガソリンを入れるところまで、すべてやってくれました。手にガソリンがついても嫌な顔ひとつせず、私が無事に道路へ戻るまで、2台のパトカーで見守ってくれました。携行缶代だけは、今も心の中で返済中です。
911で真っ先に来てくれた警察官
つい最近の出来事です。母がわが家に来ていたとき、突然、具合が悪くなり、私は慌てて911に電話しました。しばらくして玄関を開けると、そこに立っていたのは救急隊員ではなく、一人の警察官でした。
「救急車を呼んだはずなのに、どうして警察官が?」
アメリカでは地域によって、警察官が「ファーストレスポンダー」として医療緊急事態に出動し、救急隊より先に到着するそうです。ほどなくして、もう一人の警察官も駆けつけてくれました。
二人はすぐに母のそばへ行き、状態を確認すると、酸素ボンベを持ってきて酸素マスクをつけてくれました。その落ち着いた動きを見ているうちに、私の緊張も少しずつ和らいでいきました。
救急車が到着した後も、二人はその場を離れず、救急隊員と協力しながら、母の搬送を最後まで手伝ってくれました。不安でいっぱいだった私にとって、誰よりも早く駆けつけ、黙々と動いてくれた二人の姿は、本当に心強いものでした。

怖くて威圧的に見える制服の内側にあったのは、意外なほど親切で頼もしい素顔でした。毎年、年末には地元の警察にドネーションをしていますが、今年はそんな感謝も込めて、いつもより少し多めにしようと思います。
今日のひとこと
「第一印象は、あくまで仮説」
ときには、うれしい大ハズレもある。
















