大統領選期間中から現在に至るまで嘘を垂れ流してきたと連日非難されるトランプ大統領。自分に都合の悪いニュース(事実)や批判的な報道をするCNNやNBC、ワシントンポスト、ニューヨークタイムズなどを「フェイクニュース」と執拗に罵倒し、コミー長官解任の際には録音テープの存在をほのめかし恫喝したあげくテープの提出を求められると土壇場で「ない」と撤回。先月29日はMSNBCの女性キャスターに対して「知能指数が低い」「フェースリフトでひどく出血していた」などと中傷、今月2日早朝には、CNNのロゴで顔を隠した男性を床に張り倒す自分の動画をツイートした。
大統領として前代未聞の言動から精神医学の専門家の多くは、トランプが偏執や妄想を伴う精神病の兆候や知的障害があるのではないかと懸念。これまでに5万8000人以上の専門家が、「警告する医師の義務」に基づき、憲法修正第25条にのっとりトランプを弾劾しようと非営利の市民団体change.orgの誓願書に署名している。
5月3日付ワシントンポストはピュリッツアー賞を受賞した保守派ジャーナリスト、ジョージ・F・ウィルによる「トランプは危険な障害を持つ(Trump has a dangerous disability)」を、同4日付USAトゥデーは双極性障害やうつ病の専門家、ジョン・ガードナーの「トランプの悪性腫瘍的自己愛は害毒(Donald Trump’s malignant narcissism is toxic)」を掲載した。今週は、ウィルの意見を紹介する。

photo: Asami Kato / 本紙
奇妙かつ未熟な指導者
米国人にとっての急務は、トランプ大統領の無能力さについて考え、明言することである。(トランプは)単なる嫌がらせをしているのではなく、障害を持っているようだ。それは知的怠慢の結果ではなく、訓練されていない精神状態と途方もない自信が結びついた結果だ。
アンドリュー・ジャクソン逝去(*編集部註1)の16年後に始まった南北戦争についてトランプは、「ジャクソンは戦争をやめさせることが可能だった」と語ったが、問題は、小学生でも知っているような米国の歴史を知らないということではない。むしろ、危険なことは、知ることが何であるかを理解していないことだ。
中東のテロを解決する方策としてトランプは、「パイプや製油所をこっぱみじんに吹き飛ばす」と豪語したが、70歳の大統領は、(北朝鮮の金正恩のように)奇妙かつ未熟な指導者になり得る。トランプは選挙期間中、戦略的核兵器が何であるかを知らなかった。大統領選出後も「1つの中国政策」の重要性を知らなかった。また、人に教えたいのであればまず自分自身が学ばなければならないが、この欠陥を正すのには遅すぎる。
大統領を孤立させるのは世論次第
T・S・エリオットは、歴史を過去のものとして認識するだけでなく、連続した歴史の中に生きていなければならないとした。伝統を理解し同時に現代と未来を考えていかなければならないとした。
米国の道筋、方向性へ対するトランプの底知れない関心の欠如と制限のない天真爛漫性は、彼を無秩序な心にしがみつく糸くずのように、影響を受けやすい擬似事実の中に置き去りにする。米国は軍事大国としての地位を築いてきた。これは大統領の裁量であり、合法的にマジソンモデル(*註2)のチェックアンドバランスの拘束から免除されている。コントロール不可能な大統領を絶えず孤立させるには、(議員を動かす)世論次第なのである。トランプの行動によって、国民は彼の大統領としての資質を疑う。彼には紛争地などで軍隊を率いる資格などないのだ。
*註1 アンドリュー・ジャクソン(1767〜1845)は、第7代米国大統領(民主)。南北戦争が起きたのは1861〜1865年。
*註2 ジェームズ・マジソン(1751〜1836)第4代米国大統領(民主共和)が定めた、米国憲法の執行遵守をうたった大統領権限の基本理念。司法(連邦最高裁判所)・行政(大統領)・立法(連邦議会)の三権分立を明確にした。
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